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賞与を支給する場合の注意点
●  賞与を支払う場合の実務上の注意点
  以前は賞与には社会保険料がかからなかった。そのため外資系企業等が定期の給料の額を抑え、その分賞与として支払い社会保険料を免れるという事態が横行した。そこで、賞与からも社会保険料が控除されることになった。
  さて、実務上は賞与額面から社会保険料を控除した後の金額に対して、所得税が課税される。この所得税の算出方法は、毎月の給与のときに使う「給与所得の源泉徴収税額表」ではなく、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使うので注意されたい。見方は、前月の社会保険料控除後の給料等の金額をベースとして所得税を計算する。
  また、賞与を支払い後5日以内に、「健康保険厚生年金保険被保険者賞与支払届」を「総括表」とともに社会保険事務所に提出することを忘れないようにしていただきたい。
●  使用人兼務役員への賞与は損金
  使用人兼務役員とは、役員のうち、取締役経理部長や取締役工場長など使用人としての職務を持つものをいう。ただし、社長、副社長、代表取締役、専務取締役、常務取締役、監査役、非常勤役員、同族会社のみなし役員は使用人兼務役員にはなれない。  税法上、使用人兼務役員に対して支給する使用人職務に相応する賞与は、以下3つの条件をクリアすれば損金として処理してもよい。
(1) ほかの使用人に対する賞与の支給時期と同時期に支給すること
(2) 使用人の職務に対する賞与の金額として適正金額を支給すること
(3) 確定した決算においてその金額を費用処理すること
●  税務調査で指摘! みなし役員への賞与は費用ではない
  中小企業の多くは同族だけで経営をしている、つまり株主と経営者が同じである会社が多い。そのため自分の給料を自分が決めることになり、家族を役員としないで使用人として賞与を支払うことにより税金を免れるという行為が可能になってしまう。そこで、課税の公平という観点から、税金の計算上、同族会社の一定の人を「みなし役員」としている。
(みなし役員の条件)
(1)経営に従事している
(2)持株割合 イ.自分の属する株主グループが上位3位以内で50%超所有していること
ロ.自分の属する株主グループが10%超保有していること
ハ.自分(配偶者を含む)が5%超保有していること
  中小企業の場合は、一般的に(2)の持株割合の条件に該当しているので、大事なのは(1)の経営に従事しているかどうかの判定である。こちらは事実認定となるが、単に伝票入力や販売をしているだけというのでは経営に従事しているとはいえない。具体的に、融資の際の金融機関交渉を行っている、使用人の採用や退職に決定権を持っている、売値や買値に決定権を持っているなど、会社経営の重要な意思決定権を持っている人は役員とみなされる。また、みなし役員は使用人兼務役員にはなれない。
  そこで、例えば登記上の役員でないからといって社長の奥さんに賞与を支払っていると、税務調査で「役員賞与」と認定されてしまうこともある。ご存知の通り、役員賞与は、法人税法上は費用とならないので、追加で税金が発生してしまう。
(今村京子 マネーコンシェルジュ税理士法人)
2008.12.15
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