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2007年中の相続税の課税割合は最低の4.2%
●  課税割合は4年連続の最低水準
  国税庁がまとめた2007年分相続税の申告事績及び調査事績によると、2007年1年間に亡くなった人は約111万人だったが、このうち相続税の課税対象となった人数は約4万7千人で、課税割合は4.2%だった。相続で税金がかかるのは100人に4人という状況が続いている。この課税割合4.2%は前年分と横ばいの数字だが、直近において基礎控除額の引上げなどがあった1994年分以降では4年連続の最低水準となっている。
  相続財産額の構成比は、「土地」が47.8%でもっとも高く、「現金・預貯金等」20.5%、「有価証券」15.8%の順。土地は、地価の下落を背景に、1994年分の70.9%から一貫して減少している。2007年分の土地の構成比は前年から横ばいとなったが、相続財産に占める割合が高い土地の評価が下がるにつれ、年々、相続財産の課税価格が基礎控除額(「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」)内でおさまるケースが増えていることになる。
  ちなみに、路線価の基礎となる標準宅地の平均額の推移は、1平方メートルあたり25万6千円だった1994年を100とすると、年々減少をたどり、2007年は14年ぶりに上昇した2006年に引き続き2年連続で上昇したものの、1平方メートルあたり12万6千円と、いまだ49まで回復したに過ぎない。もっとも、100とした1994年でも課税割合は5.2%だから、もともと相続税の課税割合は低いともいえる。
  2007年中の相続に係る課税価格は、10兆6,216億円(対前年分比2.4%増)、これを被相続人1人あたりでみると、2億2,763万円(同0.8%減)となる。また税額は、1兆2,634億円(同3.5%増)、これを被相続人1人あたりでみると、2,708万円(同0.2%増)となっている。
●  相続税調査では4,119億円の申告漏れ課税価格を把握
  一方、2007事務年度分の相続税調査事績によると、今年6月までの1年間に2005年分および2006年分の申告事案を中心に1万3,845件の調査を実施し、うち98.5%にあたる1万1,884件から総額4,119億円の申告漏れ課税価格を把握した。前年度に比べ、調査件数、申告漏れ件数ともに1.5%減少したが、申告漏れ課税価格は1.0%増加し、1件あたりの申告漏れ課税価格では2.5%増加の3,466万円となった。
  また、加算税134億円を含めた追徴税額は941億円(対前年度比0.2%増)で、申告漏れ1件あたりでは792万円(同1.7%増)となる。仮装・隠ぺいなど意図的な不正を行ったとして重加算税を賦課された件数は、申告漏れ件数の16.1%にあたる1,914件(同5.2%増)で、その不正申告漏れ課税価格は782億円(同16.1%増)にのぼった。申告漏れのあった相続財産の金額の内訳は、「現金・預貯金等」が1,517億円と36.8%を占め最多。
●  海外関連の相続税調査で前事務年度から倍増の申告漏れを把握
  また、海外の相続財産が増加傾向にあることから、国税当局では国際税務専門官等を中心に海外資産の実態把握や的確な調査を実施。同事務年度は407件(対前事務年度比11.8%増)の調査を実施した結果、334件(同14.4%増)から実に前事務年度から108.0%増とほぼ倍増の308億円の申告漏れ課税価格を把握した。1件当たりの申告漏れは9,227万円(同81.8%増)と全体の申告漏れ課税価格の平均3,466万円の2.66倍にのぼる。
  大口事案が多いことや“海外財産なら見つからない”と安易に考える相続人がいかに多いかがうかがわれる。例えば、元会社役員の被相続人に係る調査を実施したところ、被相続人は生前に海外で保有していたコンドミニアムの売却代金を海外の銀行で相続人と共同名義で運用していたことを把握。相続人は、その預金が相続財産だと認識しながら、財産の所在が海外であることなどから、税務署に把握されないと考え申告から除外していた。
参考資料:「相続税の申告事績及び調査事績」(国税庁)↓
http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2008/7323/01.htm
(浅野宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2008.12.29
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