>  今週のトピックス >  No.1771
新入社員の会社への期待感の変化
●  相談先は上司
  昨年(2008年)入社の新入社員に対して行われた、さまざまなビジネスシーンにおける意識調査を紹介した(今週のトピックス1635)が、入社半年後に同じ新入社員に同じ設問で再度、意識調査を行い、半年間での意識変化をみた調査結果が、(財)社会経済生産性本部から報告された。
  半年間で回答率が変動したビジネスシーンでの設問を、その変動の大きな順に紹介する。もっとも大きく変動した設問は、「職場でコンプライアンス上問題ある事態があるが、上司が動いてくれない」場合、「管理部門に相談する」が36.8%から22.6%へ大きく減少した。逆に「もうひとつ上の上司に相談する」が49.7%から58.9%へ増え、一方で「分からない」も11.3%から16.6%と増えている。
  管理部門への期待が弱まっているのは、他部署では当事者意識を持って対応してくれないことを半年にして理解したためかも知れない。2007年の新入社員に対しても同じ設問があるが、その際の半年間の変化率でも、総務への相談は14.2ポイント減っており、「もうひとつ上の上司へ相談する」は8.1ポイント増えていた。
●  会社に頼らず自分優先
  次に変動が大きいのは、「ビジネス上有益な情報を入手した際に上司や先輩に報告する」という問には、「回りの上司、先輩に対して積極的に情報を提供する」が70.8%から80.3%に増えている一方で、「上司、先輩といえばライバルなので必要に応じて提供する」が29.2%から19.7%に低下している。会社に入って上司や先輩に仕事上で世話になるにつれて、ライバルというより尊敬すべき先輩という認識が高まってくるのではないか。
  「職場の飲み会と先約の学生時代の飲み会がぶつかった」場合、「職場の飲み会に出る」が入社直後は56.6%だったが、半年後には46.4%に激減。一方で「友人との飲み会に出る」が43.4%から53.6%に増えている。会社にも慣れて一通りの知識を得ると、会社の上司・同僚からの情報よりも他社の友人から得る情報のほうが貴重と感じるようになるのだろう。
  「仕事のミーティングで上の先輩と意見が対立した」とき、「自分の意見をはっきり言う」が63.6%から56.0%へ低下し、「先輩の顔をたてて黙っている」が36.4%から44.0%へ増えている。職場の人間関係を重視するようになったのだろう。
  また「業務中にマニュアル以外の事態が発生した」場合は、「できるだけ自分で工夫する」が31.6%から37.4%と高くなり、逆に「先輩・上司に相談する」は68.4%から62.6%と低下している。仕事をつうじて自分に自信がついたということだろう。
  これらの意識の変化に共通する要因には、会社に期待するものが薄くなったことがある。「職場で仕事を覚えられる、ビジネススキルを上げられる、上司が導いてくれる」ことよりも、「自分の力で仕事・スキルを切り開くしかない」ことに気付くのだろう。
●  半年間で高まる転職志向
  こうした気付きが、以下に述べるような意識の変化につながる。「キャリアプランに反する仕事を続けるのは意味がない」に対して「そう思う」が18.7%から30.9%、「そう思わない」が81.3%から69.1%、「条件の良い会社に移るのが得」に対して「そう思う」が23.4%から35.7%へ、「会社の親睦行事には参加したくない」が15.2%から25.8%と増えている。
  これらの回答は職場への期待がさめたことで、職場に依存しない考え方が身に付いた結果のようだ。こうしたことから、若者の転職志向の高まる根本原因は、若い社員の期待に応えられない職場・上司にあるのかもしれない。
出所:財団法人社会経済生産性本部「2008年度新入社員 半年間の意識変化調査」
(可児 俊信 ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2009.01.13
前のページにもどる
ページトップへ