>  今週のトピックス >  No.1778
2009年の世界経済、同時大不況に
●  「心臓部」を直撃
  「100年に1度」といわれる世界的な金融危機を経験した2008年。その翌年にあたる2009年の世界経済は一言で言えば「世界同時大不況」である。日本がバブル崩壊後に経験した「デフレスパイラル」や金融機関の「貸しはがし」、不動産不況や企業のリストラが世界規模でいっせいに襲ってくると考えた方がいい。こうした前提にたって筆者は最低でも2〜3年の中長期不況を想定している。
  金融危機前の世界経済は、米国という心臓をポンプに資金という血液を世界に循環させているようなものだった。冷戦の崩壊に伴う旧共産主義国の勃興と資源価格の上昇により、新興国や中東に過剰貯蓄が生じ、その資金が過剰消費国の米国に還流。米国が新興国や中東諸国に資金を再投資することで、さらにそれらの国々が潤うという循環だった。
●  新興国も期待薄
  米国の強心臓を支えていたのは住宅価格の上昇を前提に金を借りて消費を膨らませた個人消費と、効率的で流動性が高く世界各国の投資家をひきつけた金融市場だが、「サブプライムローン問題」はその両方を直撃した。昨年9月の米証券大手リーマン・ブラザーズの破綻で米金融市場はまさに心停止状態となり、世界経済という体全体に悪影響を及ぼし始めたというのがこれまでの動きだ。
  世界の景気が回復するためには、これまで心臓の役割を果たしてきた米国の個人消費と金融市場が復活するか、それに代わる新たなポンプが必要となる。いずれも難しいというのが筆者の考えだ。
  金融危機で経営体力が低下した金融機関は、日本のバブル崩壊後のように貸し渋りか、貸しはがしに走る。米国では一般の消費者がカードで買い物できないほどの信用不安が起きている。失業者数は史上最高水準に達しており、個人消費がすぐに回復するような状況ではない。実体経済の悪化で投資家はリスク資産への投資に消極的。金融機関も投資家に金を貸す余裕はない。米国に代わる消費の担い手として新興国に期待を寄せる向きもあるが、先進諸国からの投資が細り成長率は鈍化。かつての米国に取って代わる勢いはない。
●  日経平均7,000円割れも
  こうした状況では世界的に消費意欲が減退し物価が下がる。つまり「世界同時デフレ」となる。投資家はリスクの高い株式よりも安全性の高い債券運用に走り、金利は低下。株価の上昇は見込めない。リスクを織り込みすぎて昨年、世界的に急落した株価は一時的に戻すかもしれないが限定的だろう。
  米国経済の低迷で全般的にはドル安傾向となるはずだ。ユーロ圏経済も厳しいので、消去法的に円が買われる状況は続きそうだ。
  こうした前提に立てば、2009年の日経平均株価は上昇しても1万1,000円程度だろう。不況の深さによっては7,000円を割り込むかもしれない。長期金利は1〜1.5%(場合によっては1%を割り込むこともありえる。逆に1.5%を上回ることは考えにくい)、ドル円相場は1ドル=80〜100円のレンジで推移するとみている。
2009.01.19
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