>  今週のトピックス >  No.1779
前年を下回る学生の就職内定率
●  前年同期比で内定率は1.1ポイント低下
  半年前までは絶好調であった大学生・短大生の就職内定状況が一転厳しくなったのが統計数字にも反映された。今年(2009年)3月卒業者の就職内定率についてはトピックス1767号にて2008年10月1日時点での状況を報告した。そこでは企業業績が好調を維持するなか人材確保のために大学生などの就職内定率が高い水準となっていた。今回12月1日時点での内定状況が報告された。厚生労働省は毎年定期的に内定状況を調査しているが、内定取り消しなどの異常事態を鑑みて12月1日時点での状況は異例の速さで公表された。
  大学生の内定率は80.5%である。2008年3月卒業者の同時期の内定率が81.6%であったことから内定率は1.1ポイント低下していることになる。ちなみに2007年は79.6%、2006年は77.4%。実数でみると、大学卒業予定者数54.4万人に対して、就職希望者数は41.1万人、うち内定者数が33万人である。
●  内定率は国公立優位
  男女別では、男子の内定率が80.4%であり、前年卒業者の同時期の内定率が81.8%であったことから内定率は1.4ポイント下回った。ちなみに2007年は80.9%。女子は80.5%であり、前年の81.4%を0.9ポイント下回った。2007年は78.2%である。男女とも内定率が低下している。
  なお、男女の内定率は、就職環境が厳しかった時期は男女差が大きかったものの、次第に差がなくなっており、前年からはほとんど差がなくなった。また国公立では85.3%(2008年85.8%、2007年83.1%)、私立は79.0%(2008年80.3%、2007年78.6%)であり、国公立優位の内定率となっている。ただし最終的な就職率は国公立97.5%、私立96.7%とあまり差はない。
  これまで最終的な就職率も年々上がっており、2008年の就職率は、男子で96.6%、2007年96.6%、2006年は95.5%、2005年は93.3%、2004年は93.0%と年々改善している。女子は2008年が97.3%、2007年96.0%、2006年95.0%、2005年93.8%とこれも急速に改善している。しかし今年の最終就職率は前年の就職率には及ばないとみられる。
●  都市部と地方との内定率格差が拡大
  また以前は、地域によって内定率に差があったが、それも解消しつつあった。2006年12月時点では関東地区は83.1%と最も高かった。近畿地区82.7%、中部地区78.4%となっているが、北海道・東北地区73.3%、中国・四国地区72.2%、九州地区73.8%と地域間の格差が目立っていた。2007年は関東83.7%、近畿84.3%、中部79.7%、北海道・東北76.9%、中国・四国79.3%、九州76.4%と地方の内定率が上がっており、地域格差が少なくなってきていた。
  しかし今回の内定率の低下は地方ほどその影響が大きい。前年に比べた内定率の低下は、関東で0.2ポイントの低下、中部では5.4ポイントの上昇となっているが、北海道・東北では5.3ポイント、近畿では3.0ポイント、中国・四国では2.3ポイント、九州では1.5ポイントとそれぞれ低下しており、地域での格差が再び広がっている。
●  短大卒の内定率低下が顕著
  大卒に比べて低かった短大卒の内定率もこれまでは改善していた。短大卒業予定者数は7.8万人(2008年8.4万人、2007年は9.3万人)、うち就職希望者数は6.4万人(同6.9万人、同7.3万人)であり、内定者数が3.6万人(同4.2万人、同4.0万人)である。内定率は56.9%で前年の60.7%と比べて大きく落ち込んでいる。大学生は1.1ポイントの低下に対し、短大生は3.8ポイントの低下である。
  前年の短大の最終的な就職率は94.6%(2007年では94.3%、2006年90.8%)であり、それを下回る可能性がある。
出所:厚生労働省 「平成20年度大学等卒業予定者の就職内定状況調査(平成20年12月1日現在)」
(可児 俊信 ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、CFP®、
米国税理士、DCアドバイザー)
2009.01.26
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