>  今週のトピックス >  No.1781
4社に1社は、従業員を削減
●  従業員の削減は、今後も増加傾向
  現在でも派遣切りや正社員のリストラなどはニュースなどでみかけるが、この天災のような状況に政府も対応に苦労している。雇用調整助成金等の支給要件緩和などで一時的な対処をしているが、まだまだ十分ではない。年末年始は、派遣村などがテレビで大々的に放送されたこともあり、世間からは同情の声もあがっていたが、明日はわが身ということを実感した人もいたのではないだろうか。今後のことを不安に思っている人も多いのは確かで、正社員であっても、企業側が賃金カット、ワークシェアリング導入などにより何らかの影響を受けることは考えておかなければならない。もはや雇用を維持するためにはやむを得ないという中で企業側も何とか対応しているが、このような未曾有の経済不況の中では、さらに従業員の削減が進むことは、間違いないと思われる。賃金カットと雇用の維持の問題は、よく議論されるが、考え方はそれぞれだ。先日もある大手企業が、今後一律従業員の賃金を5%カットすることを発表しており、この流れは続いていく可能性が高いのではないだろうか。
●  製造業の非正規社員の雇用調整が目立つ
  帝国データバンクの調査によると、2008年末までに「正社員」「非正社員」のどちらか、または「両方」を削減した企業は1万731社中1,649社(構成比15.4%)に達していることが分かっている。また2009年以降、削減を検討している企業を見ると、同2,399社(22.4%)と、さらに増加傾向にあるようだ。この結果、景気後退を要因として従業員を削減した(検討している)企業は計2,890社(26.9%)と、4社に1社は雇用調整を行う見込みである。
  2008年末まで「削減はない」という企業は、「正社員」で8,566社(79.8%)、「非正社員」で5,985社(55.8%)。しかし2009年以降「削減する予定はない」という企業は「正社員」で6,688社(62.3%)、「非正社員」で4,253社(39.6%)と2008年末と比べ、それぞれ17.5ポイント、16.2ポイントの減少ということになっている。
  業界別にみると、製造業が今回の経済不況のあおりを一番受けており、中でも自動車関連の非正規雇用者についての雇用調整が目立っており、今後の動向には注目していかなければならない。
●  ワークシェアリングは、中長期的には必要な施策
  最近、雇用を維持するためには「ワークシェアリング」も選択肢として考えていかなければならないと経団連会長が考え方を示したことを受けて、ワークシェアリングについては、真剣に議論される機会も増えてきた。ワークシェアリングについては、たくさんの課題がある反面、導入のメリットもあり、アンケート結果などを見ると賛否については意見が大きく分かれている傾向にあった。
  実際に現場レベルで考えた場合には、ワークシェアリングは、ホワイトカラーの仕事には導入が難しいことは確かで、また日本の文化にはあわないこともあり、取り組みはほとんど進んでいないのが現状だ。一部の市町村などで導入しているところもあるが、政府が求めているような本格的な導入はまだ見られていない。そうはいっても今後はワークライフバランスの観点からも、多様な働き方が求められるようになってきているので、今回の経済不況をきっかけに真剣に考え、中長期的に必要な施策の1つとして捉えていく必要があるのではないだろうか。
出所:帝国データバンク「TDB景気動向調査(特別企画):雇用調整に関する企業の動向調査」
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2009.01.26
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