>  今週のトピックス >  No.1782
海外子会社配当の益金不算入制度の創設
●  出資比率25%以上の海外子会社からの配当額の95%が益金不算入
  2009年度税制改正においては、国際展開するわが国企業が獲得する海外子会社の利益について、税制に左右されずに、必要な時期に必要な金額を国内に戻すことができるように国際租税制度を整備する。その目玉は、海外子会社配当の益金不算入制度の創設だ。現行の(間接)外国税額控除制度では、海外子会社からの配当は税率約40%で課税されるが、それに代えて、同配当を益金不算入とする制度を恒久措置として創設する。
  同制度の対象子会社は、国内親会社の出資比率が25%以上の海外子会社(株式保有期間6カ月以上)だが、これで海外現地法人の95%以上がカバーできるとみられている。現行制度では、間接25%以上の出資比率の孫会社は対象となるなど、孫会社の選別が必要である上、適用対象となる孫会社ごとに外国税額および所得を計算することとなり、煩雑だったが、改正後は孫会社の選別が不要となり、配当の原資を管理する必要もなくなる。
  国内親会社が海外子会社からの配当を益金不算入する場合は、その配当に係る費用に相当する金額として配当額の5%を控除する。つまり、海外子会社からの配当額の一律95%が益金不算入となる。この益金不算入割合は、フランスやドイツなどの95%と同じ割合となる。また、海外子会社からの配当に係る外国源泉税は、その国内親会社の各事業年度の所得の金額の計算上、損金算入せず、外国税額控除の対象としない。
●  ファンド経由の対日投資は株式譲渡益を非課税に
  海外子会社利益の国内還流を図る一方で、海外資金を呼び込むための課税の特例を講ずる。ベンチャーや再生企業などにファンドを通じた対日投資を促進するため、投資事業有限責任組合やこれに類する外国組合(LPS等)に出資を行う、特定の非居住者・外国法人などの海外投資家に対し、課税の特例を創設する。
  現行は、日本国内に事業所等を有するファンドを経由して日本企業に投資する海外投資家は、その株式譲渡益に対して、その居住地国での課税に加え、日本においても課税される。海外企業であれば実効税率約40%の高い法人税が課されるため、対日投資の障害とみられている。
  そこで、2009年度税制改正では、(1)LPS等の有限責任組合員、(2)投資組合の業務を執行しない、(3)組合持分が25%未満、(4)国内に投資組合の事業以外の事業に係る恒久施設を有しないことなど、一定の要件を満たす非居住者・外国法人(特定外国組合員)は、国内に恒久的施設を有しないものとし、株式譲渡益を非課税とする。
●  事業譲渡類似課税は「組合単位」から「組合員単位」で判定
  また、日本に事業所等を有しない組合を経由して日本企業に投資する非居住者・外国法人組合員を対象とする事業譲渡類似課税の判定についても、現行の「組合単位」から「組合員単位」とする。現行では、企業の25%以上の株式を保有する者が5%以上の株式を譲渡する場合は課税されるが、組合経由の投資は「組合単位」で判定され、投資家単位では持分が25%未満でも、ファンド単位で持分が25%以上であれば課税される。
  改正後は、特定外国組合員等による1年以上の長期保有株式等(公的資金が注入された破たん金融機関の株式を除く)の譲渡については、「組合員単位」で事業譲渡類似株式の譲渡に該当するかどうかを判定し、持分が25%未満であれば、その株式の譲渡益は非課税とする。日本に拠点がない既存ファンド経由の投資も優遇するわけだ。この改正は、2009年4月1日以後に行われる株式の譲渡について適用される。
(浅野宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2009.01.26
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