>  今週のトピックス >  No.1787
雇用環境に対応した雇用保険法改正
●  派遣労働者等には給付を増額
  厚生労働省は、厳しい雇用環境への緊急対応、とくに「派遣切り」に象徴される非正規労働者へのセーフティーネット機能を強化するため、今国会で雇用保険法を改正する。施行は2009年4月予定である。ちなみに雇用保険法は直近では2007年10月に改正施行されている。このときは雇用環境が改善している状況下であったため、受給資格要件である被保険者期間の延長(離職前2年間のうち受給資格を得るために必要な被保険者期間を6カ月から12カ月に延長)や教育訓練給付金の引下げ(給付率、給付額上限とも)が行われた。
  今回の改正点は雇用期間が満了し、それが更新されず止むを得ず離職した非正規社員(特定理由離職者)については、離職前1年間のうち6カ月間の雇用保険被保険者期間があれば受給資格を得ることができるようになる。通常は離職前2年間のうち12カ月の被保険者期間が必要である。
●  再就職時の給付も増額
  同時に特定理由離職者に対しては、基本手当(いわゆる失業手当)の給付日数も増やす。給付日数は離職前まで働いてきた年数や離職理由によって決定される。通常の離職者が受給できる給付日数ではなく、解雇・倒産等により離職した者と同じ給付日数を受けられる取扱となる。さらに年齢や地域によっては、より再就職が困難な離職者もいることから、それに該当する場合は上述の日数に加えて最長60日分多く受給できるようになる。
  また再就職手当の支給率も引き上げられた。再就職手当とは就職促進給付と呼ばれるもので、基本手当を受給中に再就職先が決定すると本来受給できるはずの給付が打ち切られてしまう。これが再就職をする妨げになってしまう。そのため基本手当の給付日数が残っているうちに再就職が決まった場合は、残り日数分の給付日額に30%を乗じた金額をまとめて支給する制度である。この30%を40%(残日数によっては50%)に引き上げることになった。これにより一層早期再就職が促進されることとなる。
●  雇用保険料は引下げ
  その他の改正点は2点である。
  まず育児休業期間中は、子どもが原則として1歳になるまで雇用保険から所得補償として育児休業給付が支払われる。育児休業給付は2種類あり、育児休業期間中に従前の所得の30%を補償するのが育児休業基本給付金である。もうひとつは復職後6カ月を経過した時点で、育児休業基本給付金を受給していた期間に対して、さらに20%を上乗せするもので育児休業者職場復帰給付金といわれるものである。つまり最終的には50%所得補償される。今般の改正では、育児休業基本給付金の補償率を50%に高め、同時に育児休業者職場復帰給付金を廃止することとなった。休業者にとっては職場復帰後でなくても50%の補償が受けられるものである。
  また雇用保険料の保険料率を平成21年度に限り、0.4%引き下げることとした。雇用保険の保険料率は1.5%である(一般事業の場合)。これにより労使それぞれ0.2%ずつ引き下がることになる。雇用保険の積立残高は約5兆円あり、ここ数年の雇用環境の改善によって積みあがってきている。それを背景にした引下げである。
出所:厚生労働省 「雇用保険法の一部を改正する法律案の概要」
(可児 俊信 ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、CFP®、
米国税理士、DCアドバイザー)
2009.02.09
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