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事業縮小となった中小企業に対する助成金の創設
●  中小企業緊急雇用安定助成金の概要
  100年に1度という未曾有の経済不況に見舞われ、企業を取り巻く環境は厳しさを増している。内定取り消し、派遣切り、従業員削減など雇用についても非常に不安定な状況である。こうした状況は、中小企業では特に深刻な事態となっており、急激な業績悪化により企業の存続のためには泣く泣く従業員を解雇しなければならないほどである。
  このような緊急事態の中で、厚生労働省は、中小企業緊急雇用安定助成金という助成金制度を平成20年12月からスタートさせている。この助成金は、従来の雇用調整助成金制度を見直したもので、急激な資源価格の高騰や景気の変動など経済上の理由による企業収益の悪化から生産量が減少し、事業活動の縮小を余儀なくされた中小企業事業主が、その雇用する労働者を一時的に休業、教育訓練または出向させた際の手当もしくは賃金等の一部を助成する内容となっている。業績悪化により雇用調整を行うことを検討している中小企業が多く存在することを考えると、大変有効な助成金であると思われる。
●  中小企業緊急雇用安定助成金の支給要件と助成額
  肝心の支給要件であるが、雇用保険の適用事業主であること、最近3カ月の生産量がその直前の3カ月または前年同月比で減少していること(生産量の減少が5%未満の場合は、前期決算等の経常利益が赤字であることが必要)などが挙げられるが、休業、教育訓練、出向などによっても要件が異なるので確認が必要である。この助成金のややこしいところは、支給対象となる取り組み内容によって提出書類が異なり、手続き業務が煩雑なところであるので、その都度確認が必要であろう。
  では、今回スタートした中小企業緊急雇用安定助成金はいくらもらえるのだろうか。気になる助成額は、次のとおりとなっている。
(1)休業手当または賃金に相当する額として厚生労働大臣の定める方法により算定した額の5分の4(上限あ       り)。
(2)教育訓練を実施した場合は、訓練費として1人1日当たり、6,000円を(1)に上乗せ。
(3)出向の場合は、出向元事業主の負担額(出向元事業主の負担額が、出向前の通常賃金の2分の1を超えると      きは2分の1が限度)の5分の4(上限あり)。
●  申請のポイントは、事前の届出
  ポイントとしては、休業、教育訓練及び出向の実施について、事前に都道府県労働局またはハローワークに届け出る必要があることだ。事前の届出が行われなかった休業、教育訓練および出向については、助成金の支給対象とならないため注意が必要である。したがって、事前にしっかりした休業、教育訓練などの実施計画の立案が重要となってくる。また、例えば、休業中の給与計算方法や教育訓練時間の取り扱いなど、業務上の取扱いなどについてもきちんと考えておかなければならないだろう。支給要件が多く複雑な助成金ではあるが、中小企業にとっては雇用の維持と経営の存続の一助になると思われるので、上手に活用することで今の厳しい経済状況を乗り切っていただきたいと思う。

※なお、詳細については、管轄のハローワークへお問い合わせいただきたい。

 出所:厚生労働省「中小企業緊急雇用安定助成金」
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/pdf/koyouiji.pdf
(庄司 英尚、株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2009.02.09
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