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定額給付金は非課税、滞納の差押さえも不可
●  2009年度税制改正において非課税の取扱いを明記
  政府が「生活対策」において実施することとされた総額2兆円の定額給付金の給付額は、1人につき1万2千円、2009年2月1日の基準日において65歳以上の者や18歳以下の者は8千円が上乗せされ2万円となる。この基準日時点で、(1)住民基本台帳に記録等されていれば1万2千円が、(2)上乗せに該当する年齢ならば2万円が給付される。受給権者は世帯主となっている。
  定額給付金の税務上の取扱いは、2009年度税制関連法案のなかで「『生活対策』において実施することとされた定額給付金については、所得税、個人住民税を課さないこととする」と明記されている。
  地域の経済対策に資することを目的とする給付金の趣旨からすれば当然のようだが、同様に緊急経済対策の一環として1999年に実施された「地域振興券」では、一時所得扱いだった。当時の自治省の説明では、地域振興券の交付対象者は、若い層の親や所得の低い高齢者層など可処分所得の比較的低い層であるため、50万円の特別控除額により課税されることはほとんどないという理由からだ。
  この考えでいけば定額給付金の場合は、所得階層に関係なく全国民に給付するため、一時所得扱いにすると課税されるケースが出てくることから、非課税扱いにしたということになる。
●  生活者の不安に対処する趣旨にそぐわない給付金の差押さえ
  一方、総務省は1月27日、全国の自治体に対して第2次補正予算で実施が決まった定額給付金に関する取扱いを通知した。同給付金をめぐっては、対象者の収入限度額などの問題で政府の対応が迷走、実務を担う市町村からも批判が相次いでいたことから、同省がこれらの実務上の疑問に対し『定額給付金給付事業Q&A』で答えている。
  市町村から事前に多くの照会が寄せられているが、そのひとつに「地方税の滞納者に支給される給付金を、銀行口座に振り込まれたところを差し押さえていいか」というものがある。これに対して、「給付金事業は景気後退下で生活者の不安に対処するために実施するものであり、その趣旨にそぐわない」と回答。定額給付金の差押さえは不可となった。 また、給付金事業の事務にあたる職員が税務職員などに個人の給付の有無や時期等を教えることは公務員の守秘義務上、問題があるとしている。
  定額給付金給付事業は市町村が行う自治事務と位置づけられたため、申請期間や郵送・窓口などの受付方法が市町村によって異なるものと予想されている。ただし、申請受付開始から6カ月が経過するとどこでも受付終了になる。
●  給付は5月の大型連休明けの後か
  ところで、定額給付金を盛り込んだ2008年度第2次補正予算案の成立がずれ込んでいることから、定額給付金がいつ国民の手元に届くのか不透明な状況にある。定額給付金は予算関連法案が成立しないと執行できない。民主党などの野党が採決しなければ、予算関連法案が成立するのは、衆院での再可決が可能となる3月14日以降となる。
  さらに、給付の実務を担当する市区町村においても、給付費や事務費など実施に要する経費を国が100%補助するものの、作業に必要な経費を盛り込んだ各市区町村の補正予算案を、2月中旬から3月上旬に開かれる各市区町村会議で可決する必要がある。
  こうしてみると、政府が望む定額給付金の年度内支給は難しいといえる。定額給付金が国民の手元に届くのは、大半の市区町村では5月の大型連休明けの後となるとみられている。
(浅野宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2009.02.09
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