>  今週のトピックス >  No.1794
「有事の金」が再高騰、通貨への不信感映す
●  再び1,000ドル突破か
  「有事の金」といわれる金の価格が再び暴騰している。実は昨年2月にも「今週のトピックス1590」で同じような原稿を書いており、その後3月にはニューヨーク先物が史上初めて1トロイオンス(約31グラム)当たり1,000ドルを突破した。このときは金融危機でドルへの信認が低下し、金価格が高騰したわけだが、今回はドルというより円やユーロなども含めた通貨そのものへの不信感を映しているようだ。
  2月上旬時点で金価格は900ドル前後で推移している。昨年後半には700ドル台に下がる場面もあり、徐々に価格が上昇している。気の早い調査会社や金融機関は「再び1,000ドルを突破する」というレポートを出しているほどだ。
●  各国のバラマキが背景に
  金の価格はドルと金の交換を保証した金本位制度の名残で、基軸通貨ドルの信認が揺らぐと上昇する逆相関の関係にある。従来はドルがユーロやポンドに対し売られると、金が買われやすかった。ところが最近は、ドルがユーロやポンドに対して上昇している場面でも、ドル建ての金価格が上昇し、ドル相場と関係なく金が買われている。
  この現象が意味するところは、貨幣そのものに対する不信感だ。市場の関心は昨年の金融危機から、今年に入って実体経済の悪さに移っている。世界的に景気が急速に悪化するなかで、各国政府はそれぞれ財政出動による景気対策を派手に行っている。いわゆるバラマキだ。米国のオバマ新政権は積極的な財政政策で今年度の財政赤字は1兆ドルを超える見通しだ。
  100年に1度の経済危機に財政出動によって景気を回復させようとすることは間違っていないが、バラマキによって各国政府の資金供給量が増えれば通貨の価値は下落し、いずれインフレが起こるかもしれない。ドルがだめなら、円やユーロに変えればいいが、日本や欧州各国も財政赤字を膨らませている。それならばインフレに強い金を買っておこうという心理が働くわけだ。
●  不況続けば、さらなる上昇も
  金ETFの普及も金価格の上昇に一役買っている。金ETFとは金の現物を信託財産として有価証券を発行し上場する仕組みで、株と同じように世界各国の証券取引所で売買できる。この「ペーパーゴールド」は保管などの手間で購入を見送っていた機関投資家に人気だ。昨年2月に「サブプライムローン問題が長引けば長引くほど、金の魅力は高まる」と書いているが、まさにそういう状況となっている。
2009.02.16
前のページにもどる
ページトップへ