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人事担当者の約65%、「就職氷河期」を予想
●  学生は、企業規模や知名度よりも業績や長期雇用を重視
  リーマンショック以降、日本経済は回復の兆しさえ見えず、さらに悪化していく中で、2010年度新卒採用が動き出している。学生にとっても1年違うだけでこれほど環境が変わるなどと思ってもみなかったことであろうが、学生もこの現実を受け止めて逆境を乗り越えることが必要である。そのような中で、楽天リサーチは、2月9日人事担当者を対象とした「2010年度新卒採用に関する調査」結果を発表した。それによると2010年度の就職戦線について「氷河期」になると予想したのは48.7%。「超氷河期」の16.9%と合わせると65.6%に上り、大方の予想通り就職氷河期に突入したとみているようだ。これを受けて学生がどのように行動するかは、興味があるところではあるが、安定志向はより強まりつつあるが、調査結果では、企業規模や知名度などの「大手志向」から、業績や長期雇用といった点を重視する「実利志向」の傾向が強くなっていると分析している。これは有名企業や上場企業でも倒産が相次いだことから、きちんと会社の中味を分析しようとすることが重要であると理解しているからともいえるだろう。
●  新卒採用の企業側の動き
  2010年度の新卒採用人数は、「昨年(2009年度)に比べ採用人数は横ばい予定」(41.2%)「減らす予定」(26.8%)で約7割と、冷え込む見通しであるとはいえ、横ばい予定が4割強であるということを考えると、まだ救われる部分もある。業種別に見ると、「卸売・小売業」(36.8%)、「金融・保険業」(37.9%)、「複合サービス事業」(45.5%)の業種で「2009年度より減らす」と答えた割合が全体より10ポイント以上高かった。企業側としては、このような不況時こそいい人材を採用するための力が問われるところであるが、調査結果によると、人事担当者は、人を見るときに、最も注意する点は、「話し方」(38.2%)、「表情」(23.2%)、「立ち居振る舞い」(18.2%)、「身なり」(16.6%)の順となった。エントリーシートなども重要であることは確かであるが、やはり「話し方」が重要というのは、ビジネスマンとなっても同様であることから考えると納得のいく結果である。
●  優秀な人材を採用するためには、企業側のさらなる努力が必要
  学生が就職先の条件として重視している点について、人事担当者が感じたこと3つを、2009年度と2010年度の学生の比較で挙げてもらったところ、上位2項目は「自分がやりたい仕事に就けるかどうか」(昨年:53.3%、今年:35.9%)、「仕事のやりがいがあること」(昨年:42.8%、今年:34.9%)と同様だが、今年は約8ポイントから17.5ポイント下がっている。また「長期雇用が期待できること」(昨年:14.4%、今年:34.4%)、「業績がいいこと」(昨年:11.5%、今年:25.4%)の項目は、昨年に比べ20ポイント以上伸張しており、今年は自己中心的な想いだけではなく、外的環境を意識していると感じ取っているようだ。
  外的環境を意識している新卒学生が増えている中で、優秀な人材に選んでもらえるような企業になるためには、企業側の努力も必要である。各企業が、経営理念やビジョン、経営戦略、雇用に対する考え方、CSRやワークライフバランスについての対応などをさまざまな方法で、わかりやすく発表していくことも必要ではないだろうか。
  出所:楽天リサーチ 〜 “人事担当者に聞く” 2010年度新卒採用に関する調査 〜
http://research.rakuten.co.jp/report/20090209/
(庄司 英尚、株式会社アイウェーブ代表取締役、 庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2009.02.23
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