>  今週のトピックス >  No.1802
企業の交際費、5,000円基準導入の影響で3年ぶりに減少
●  赤字法人割合は2年ぶり増加の67.1%
  国税庁がこのほど公表した「2007年度分法人企業の実態調査」結果(速報)によると、2008年3月までの1年間に全国の企業が取引先の接待などで使った交際費は、前年度に比べ6.9%(2,514億円)減の3兆3,800億円となり、3年ぶりに減少した。これは、2006年度税制改正で導入された1人あたり5,000円以下の飲食費の損金算入を認める交際費課税の軽減措置が影響したものとみられている。
  2007年度分の法人数は259万4,214社で、前年度より0.1%(1,867社)増加した。このうち、連結親法人は685社(前年度比16.1%増)、連結子法人は6,130社(同6.4%増)。連結子法人を除いた258万8,084社のうち、赤字法人は173万5,457社で全体の67.1%を占めた。この赤字法人割合は前年度に比べ0.8ポイント増と、3年ぶりに増加した。このうち、連結法人(685社)は、赤字法人割合が前年より1.6ポイント上昇の55.0%となった。
●  黒字法人の営業収入金額は増加も所得金額は4年ぶりに減少
  2007年度分の営業収入金額は、前年度に比べ1.3%増の1,562兆8,935億円と4年連続で増加した。黒字法人の営業収入金額も1,143兆2,973億円で前年に比べ1.6%増となったものの、所得金額は0.7%減の55兆1,829億円と4年ぶりに減少。そろそろ同時期から業績悪化による企業収益の低迷がうかがえる。営業収入に対する所得金額の割合(所得率)は、過去最高の4.9%を記録した前年から0.1ポイント低下の4.8%となった。
  黒字法人の益金処分総額は1.1%増の65兆8,967億円。内訳をみると、支払配当が11兆5,146億円(構成比17.5%)、法人税額13兆4,973億円(同20.5%)、その他の社外流出9兆8,335億円(同14.9%)で、これらを引いた社内留保31兆513億円は47.1%を占めた。社内留保は前年度に比べ12.7%減、法人税額も同4.0%減。なお、役員賞与は、会社法創設に伴い、2006年5月1日以後終了する事業年度から利益処分項目ではなくなっている。
●  営業収入10万円あたりの交際費等支出額は216円
  また、交際費の支出額3兆3,800億円のうち、税法上損金に算入されなかった金額は前年度に比べ9.6%減の1兆6,665億円と2年ぶりに減少し、損金不算入割合も前年より1.5ポイント減の49.3%と、2004年分以来の50%割れとなった。
  営業収入10万円あたりの交際費等支出額は、全体では前年度より19円少ない216円で、資本金階級別にみると、資本金1億円未満が635円と高い一方、資本金10億円以上は107円、資本金1億円以上10億円未満は138円と低い。また、業種別にみると、「建設業」が468円、「出版印刷業」が422円、「料理飲食旅館業」が326円と高く、一方、「鉱業」が140円、「金融保険業」が146円、「卸売業」が155円と低い。
●  営業収入10万円あたりの寄附金支出額は31円
  そのほか、寄附金の支出額は、前年度から6.2%増の4,785億円となった。営業収入10万円あたりの寄附金支出額は、全体では31円で、これを業種別にみると、「化学工業」が88円でもっとも高く、次いで「運輸通信公益事業」と「その他の法人」がともに52円で続く。一方、もっとも低いのは「料理飲食旅館業」が11円、次いで「小売業」が12円などとなっている。
  また、当期発生分の減価償却費の損金算入額は40兆3,308億円で、損金算入限度額に対する割合(損金算入割合)は93.0%となった。損金算入割合を業種別(「その他の法人」を除く)にみると、「鉄鋼金属工業」が97.8%、「化学工業」が97.3%などで高く、「繊維工業」が76.3%、「不動産業」が77.7%などで低くなっている。
  参考資料:「2007年度分法人企業の実態調査」(国税庁)↓
http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/kaishahyohon2007/02.pdf
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2009.03.02
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