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学生の就職観、「楽しく働きたい」がトップ
●  楽しく働くことができることが会社選びの重要なポイント
  株式会社毎日コミュニケーションズ(マイコミ)が発表した2010年3月卒業予定の大学生等に対する「就職意識調査」の結果によると、就職観について「楽しく働きたい」と考える学生が昨年に引き続きトップ(全体の35.3%)であることが分かった。この調査は、1979年から大学生の就職意識(大手企業志向、会社選択のポイント、就職希望度など)の調査を目的に実施されている。
  今回の調査結果からうかがえるキーワードは「安定」である。昨年秋から続く経済不況により、上場企業の倒産や派遣切り、採用抑制、内定取り消しなど企業を取り巻く環境が非常に厳しいものとなっている。こうした状況を肌でひしひしと感じている学生にとって就職に望む条件の1つとして「安定」というキーワードは、大きなウエートを占めるようになっているようだ。実際に今回の調査でも、社員の定着率や財務内容といった会社の安定度を会社選びのポイントと考えている結果が出ている。
  今回の調査では、行きたくない会社のポイントや魅力を感じる業種なども調査項目となっており、来年の採用戦略を考える上で非常に有効な資料と思われる。
●  今年の調査結果のキーワードは「安定」
  調査結果をみると、「楽しく働きたい」がトップとなっている就職観については、「個人の生活と仕事を両立させたい」「人のためになる仕事をしたい」との回答が増加していることが分かる。一昔前に多かった「出世したい」「お金持ちになりたい」といった回答はわずかとなっており、「人のためになる仕事」(ボランティア精神)を「生活と仕事の両立」を図りながら、「楽しく働きたい」と考える学生が多いようである。学生にとって「楽しく働きたい」は、「自分のやりたい仕事ができる」ということであり、会社選択のポイントでは、予想通り「自分のやりたい仕事ができる会社」がトップとなっている。今回、回答に変動があったものとしては、昨年3位だった「安定している会社」が2位に順位を上げている。また、全体における順位は低いものの、「一生続けられる会社」が全カテゴリーで割合を増やしており、ここでも学生の安定志向が浮き彫りとなっている。
  次に、行きたくない会社をみてみると、「暗い雰囲気の会社」(41.0%)、「ノルマのきつそうな会社」(31.1%)、「仕事内容が面白くない会社」(23.8%)となっており、昨年同様上位3項目に変動はなかった。この3項目に該当する会社は、楽しく働くことができないと考えているからだろう。また、今回の結果から、「財務内容の悪い会社」「休日・休暇がとれない(少ない)会社」のポイントが増加していることが分かった。これらは、企業の健全性、社員の定着率など会社の安定度を示すことから、学生が、会社の安定度によって、行きたい会社、行きたくない会社を選択している様子がうかがえる。
●  「安定」を軸とした採用戦略の必要性
  学生にとって楽しく働けることは、就職に際しての大事な要素であることは間違いないが、今年は、安定を求める学生が多くなっている点に着目すべきであろう。安定とは企業の規模ではない。今回の調査でも、上場企業の倒産や採用抑制報道の影響を受けてか、企業規模に対するこだわりは減ってきているようである。また、社員の定着率や長期で安定した生活を約束してくれる項目の割合が伸びており、会社を選択する際のポイントが昨年と今年では違ってきている様子が浮き彫りとなっている。こうしてみてみると、良い人材が採れないと嘆く中小企業にとっては、来年の採用は良い人材を採れるチャンスなのではないだろうか。企業の人事担当者は、昇給昇格などよりも「やりがい」や「会社の安定度」に重点を置いてアピールすることが優秀な人材を確保するためには必要なようである。
  出所:株式会社 毎日コミュニケーションズ 「2009年度 大学生の就職意識調査結果報告」
http://job.mynavi.jp/conts/saponet/enq_gakusei/ishiki/ishiki09/index.html
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、 庄司社会保険労務士事務所代表、
社会保険労務士)
2009.03.09
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