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医療費控除、「補てん金」をめぐる勘違いに注意!
●  差し引く補てん金は対象の医療費ごとに計算
  2008年分所得税の確定申告も残りあと1週間となった。所得税の確定申告においてポピュラーなのは還付申告、なかでも医療費控除である。
  医療費控除額は、
  (支払った医療費−保険などで補てんされる金額)−10万円(所得金額の5%が低い場合は、その5%)
で計算する。基本的に年間10万円を超えた医療費が対象ということもあって、初めからあきらめている人も多いが、配偶者や子どもなど親族に係る医療費を支払った場合も適用されるので、もう一度寄せ集めてはいかがだろうか。
  国税庁によると、医療費控除でよくある間違いは、医療費を補てんする保険金などを差し引きしないで適用するケースだそうだが、反対に支払った医療費を超える補てん金が支払われた場合でも適用されるケースがあるので注意したい。
  意外と知られていないのは、医療費控除額の差引計算は、その補てんの対象となる医療費ごとに行い、支払った医療費の金額を上回る部分の補てん金額は、他の医療費からは差し引かないということだ。
●  支払った医療費を超える補てん金は…
  例えば、同一年中に入院費と歯の治療費を支払った場合において、入院費の金額を超える金額の生命保険契約に基づく入院給付金の支払を受けたときは、その超える部分の金額は、歯の治療費からは差し引く必要はないのだ。
  また、本人が入院費10万円、配偶者が医療費10万円、子どもが医療費10万円をそれぞれかかり、本人が入院給付金30万円を受け取った場合では、医療費が合計30万円で差し引くべき補てん金が30万円だから、医療費控除の適用はないと勘違いしてしまう人が多い。しかし、補てん金は本人の入院費のみから差し引けばいいのであって、その超えた20万円を配偶者や子どもの医療費から差し引く必要はないので、本人以外の20万円はまるまる医療費の対象となるわけだ。
●  医療費の支払者と保険金等の受領者が異なるとき
  ところで、共働きの妻の出産費用を夫が支払ったが、妻が勤務する会社の互助会から出産費の補てんとして給付金を受け取る場合がある。この給付金も支払った医療費から差し引くべき医療費を補てんする保険金等に該当する。
  また、医療費を補てんする保険金等は、その保険金等の支払を受ける者が医療費を支払った者でない場合であっても、その医療費の補てんを目的として支払を受ける保険金等である限り、医療費を補てんする保険金等となる。
  したがって、妻の出産費用を夫が支払った場合に、妻が支払を受ける給付金は、夫が支払った医療費から差し引かなければならないことになる。
●  「医療費を補てんする保険金等」に該当しないもの
  なお、医療費から差し引かなければならない「医療費を補てんする保険金等」に該当しないものには、
   (1)死亡したことや身体障害者になったこと、一生治らない病気にかかったこと、あるいは療養のために働けなくなったことなどによって支払を受ける休業補償金、保険金、損害賠償金
   (2)健康保険や共済組合から支給される傷病手当金、出産手当金、育児手当金
   (3)会社や知人等から受ける見舞金
  などがあり、併せて留意したい。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2009.03.09
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