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どうなる?「協会けんぽ保険料」、地域格差10分の1に縮小へ
●  協会けんぽ保険料率、9月から地域別に
  おもに中小企業のサラリーマンが加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)。今年の9月から保険料率が都道府県別の設定に移行することが決まっている。このほど政府与党は、移行の際に生じる地域格差について、地域によって保険料に大きな差が出るのは好ましくないとして、保険料が上がる地域と下がる地域との差を本来の10分の1に抑えるとした負担軽減措置を決めた。
  協会けんぽは、旧政管健保(政府管掌健康保険)を引き継いで昨年10月に発足、中小企業のサラリーマンとその家族を中心に約3,600万人が加入する医療保険である。現行の保険料率は全国一律8.2%(労使折半)、月額保険料は11,480円(年収380万円モデルケースの場合)。
  今年9月以降は、地域の医療費に応じて都道府県ごとに保険料率が設定され、医療費の増減に合わせて毎年度、料率が変動することが法律で決められている。ただし平成25年9月までは、都道府県別料率が現行保険料率(8.2%)を上回る場合には、政令で激変緩和措置を定め保険料の大幅な増加を抑制することができる。
  都道府県別の保険料率の導入は2006年医療制度改革の柱のひとつであるが、これまで地域格差をめぐって厚生労働省による意見集約が難航していた。医療費の安い地域の料率を下げる一方、抑制できない地域には「罰則」として負担増を迫り、全体的に医療費を抑えることが厚生労働省の狙いであった。
●  都道府県間の格差、10分の1に抑制
  当初、厚生労働省が想定していた激変緩和措置案は、保険料率を5年間の中で急激に格差をつけるものから緩やかに差をつけていくものまで4種類。先月末の与党との会合では、現行の保険料率の引き上げ幅と引き下げ幅を本来の変化幅の5分の1に抑える、「5分の1」案を最有力案として提示していた。しかし与党からはさらなる変化幅の縮小を求める意見が多くあり、このほど厚生労働省が「10分の1」案を再度提示、これを自民党などが了承した。
  今回の措置が適用されれば、新保険料率で最大1.07%になる差が0.11%にまで縮小する。厚生労働省の試算では、負担増となるのは19道府県、逆に負担減となるのは21都府県である。
  来年度の本来の保険料率は一番高い北海道で8.75%、一番低い長野県で7.68%となるものが、今回の措置で北海道8.26%、長野県8.15%となる。また年収380万円のモデルケースの場合、毎月の保険料に換算すると、本来であれば北海道で12,250円(770円増)となるところが、今回の措置で11,564円(84円増)に。長野県では10,752円(728円減)となるところが、11,410円(70円減)となる。
  都道府県別保険料率は、今月末までに正式決定され9月に改定、10月から給与天引き額に反映される。なお、来年度以降の激変緩和措置はあらためて決めることとなり、平成25年10月からは本来の料率が適用となる。
(野上 幸彦 特定社会保険労務士、野上社会保険労務士事務所所長)
2009.03.16
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