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第2子以降の出生割合は、夫の家事・育児時間に比例
●  夫の家事育児時間は、第2子出生の割合に大きく影響
  厚生労働省は3月11日、2002年10月末時点で20〜34歳だった男女を対象に、毎年継続して実施している「21世紀成年者縦断調査(第6回)」の結果を発表した。この調査は、対象となった男女の結婚、出産、就業等の実態および意識の経年変化の状況を継続的に観察することにより、少子化対策等厚生労働行政施策の企画立案、実施等のための基礎資料を得ることを目的としているものである。
  今回の調査は2007年11月に実施されたが、その調査結果によると子どもが1人いる夫婦に過去5年間の第2子の出生状況を尋ねたところ、夫の家事・育児時間が「なし」と答えた夫婦で35.5%だったのに対し「8時間以上」では71.3%だった。子どもが2人以上いる夫婦についても夫の家事・育児時間が長いほど第3子以降の生まれる割合が高い傾向にある。この調査は、同じ人たちを対象に継続的に実施されており、さまざまな面で利用できるデータとして、今後も注目していきたい調査の1つである。
●  ワーク・ライフ・バランスの実践で家事育児時間の増加につなげる
  この経済不況で企業の労働時間は、減少傾向にあるとはいえ、普段の仕事で疲れて休日は家事育児を手伝えない夫も多いはずである。また休日出勤が多かったり、休日でも自宅で仕事をしている夫も結構いることも想定される。リストラがすすみ、一人ひとりの仕事の負担が増えていて悲鳴をあげている社員も実際に多い。過重労働は、メンタルヘルスの問題にもつながるし、企業側も取り組まなければならない経営課題であり、日々リスクを背負っているようでは、社内の風土もよくならず、それが社員のモチベーションにも影響してしまう可能性がある。
  労働時間については、国や地方自治体が今後も長期的な視野に立ってワーク・ライフ・バランスの啓蒙活動を続けているが、大企業だけではなく、中小企業の社員一人ひとりがワーク・ライフ・バランスを実践し、私生活の質を充実させることの重要性を理解することも重要である。そのための一つ一つの小さな活動、例えば企業側のワーク・ライフ・バランスに関するセミナーの開催や残業時間削減への取組みなどが、働く夫たちの意識を変え、家事・育児を手伝う時間の増加につながれば、第2子以降の出生が増加するのではないだろうか。
●  第2子出生割合は、育児休業制度の利用しやすい雰囲気があるかないかがポイント
  今回の調査では、妻の職場における育児休業制度の有無別にみた状況についても尋ねているが、この4年間で育児休業の「制度あり」で34.2%、「制度なし」では18.8%に子どもが生まれており、子どもが1人いる夫婦に第2子が生まれたのは、「制度あり」のうち、「利用しやすい雰囲気がある」で64.7%、「利用しにくい雰囲気がある」で52.0%、「制度なし」では28.3%となっている。やはり第2子の出生については、育児休業制度を利用しやすい雰囲気があるかどうかは、影響しているようである。
  いずれにしてもこのような調査結果を受けて、行政や各企業が協力し合って、まずはできることを考えて具体的に行動し、社会全体で少子化対策をしていくことが大事ではないだろうか。
  出所:厚生労働省 「第6回 21世紀成年者縦断調査」
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/judan/seinen09/index.html
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2009.03.23
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