>  今週のトピックス >  No.1819
高まる少子化への危機感、望まれる早急な対策と長期的視野
●  合計特殊出生率は2年連続上昇するも、続く少子化
  厚生労働省「人口動態統計」によると、平成19年のわが国の合計特殊出生率(1人の女性が15〜49歳の間に生む子どもの数の平均値)は1.34であった。合計特殊出生率は、平成17年には1.26と過去最低を記録したが、その後は2年連続増加している(平成18年は1.32)。しかし、人口維持に必要な合計特殊出生率は2.07といわれており、わが国では昭和49年にその水準を下回って以来、2.07へ回復したことは1度もない。
  こうした傾向は今後も続くことが見込まれ、今から46年後の平成67年においても、合計特殊出生率は現在と大きくは変わらないとされている(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成18年12月推計)」)。
●  高まる国民の危機感
  少子化の進行により、労働人口の減少、とりわけ若い労働力の縮小と消費市場の縮小による経済への影響が懸念される。また、高齢化が進むことで年金、医療介護などの社会保障費が増加し、国民の負担が増大することも心配されている。
  この2月に発表された内閣府「少子化対策に関する特別世論調査(平成21年1月実施)」では、合計特殊出生率の現状に対して、83.0%の人が危機感を感じていると回答しており、危機感を感じていない人(6.2%)を大きく上回る結果となった。この数字は前回調査(平成16年9月実施)で危機感を感じていると回答した人の割合(76.7%)と比較しても6.3ポイント増加しており、国民の危機意識の高まりをうかがわせる。
  また、少子化が与えるマイナス影響として半数以上の人が挙げているのは、「年金や医療費の負担など、社会保障に与える影響について」(76.1%)、「労働人口の減少など経済活力に与える影響について」(62.4%)である。やはり、社会保障や経済への影響に対する危機感がとりわけ大きいようである。
●  期待される少子化対策、求められる地域での子育て支援
  少子化問題への対策を求める声も高まっており、同調査によると「仕事と家庭の両立支援と働き方の見直しの促進」(58.5%)、「子育てにおける経済的負担の軽減」(54.6%)、「妊娠・出産の支援」(54.6%)「子育てのための安心、安全な環境整備」(51.9%)といった意見が半数以上の高い割合を示している。 また、「子育てに関する悩みを気軽に相談できるような活動」(60.9%)、「子育てをする親同士で話ができる仲間づくりの活動」(49.9%)など、地域での子育て支援活動を求める声も高まっている。
  だが、これらの声とは逆行するように、救急搬送された妊婦が病院への受け入れを断られるいわゆる“妊婦のたらい回し”や、保育施設への入所を待つ“待機児童”の増加など、出産や子育てに関する問題は山積している。
  国、自治体、企業をはじめ、国民全体が協力して子どもを生みやすく、育てやすい社会の実現を早急に目指さなければならないのは当然であるが、対策の成果が実るには、数十年といった長期的な視野が必要であり、現実的な問題として自衛・自助努力は欠かせないであろう。
出所:厚生労働省 「平成19年 人口動態統計」
      http://www-bm.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei07/index.html 
    国立社会保障・人口問題研究所 「日本の将来推計人口(平成18年12月推計)」
      http://www.ipss.go.jp/
    内閣府 「少子化対策に関する特別世論調査(平成21年1月実施)」
      http://www8.cao.go.jp/survey/tokubetu/h20/h20-syousika.pdf
2009.04.06
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