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50%以上下落時の有価証券評価損、税務上の取扱い明確化を検討
●  有価証券評価損についての会計と税務の違い
  政府と自民党は、追加経済対策の一環として、有価証券の評価損に対する税務上の取扱いを見直す案を検討している。リーマンショックによる株式市場の低迷により、法人の所有する株式にも大幅な含み損が発生している。現状では、この評価損に対する会計上と税務上の取扱いが異なるため、法人がこの評価損を活かしきれていないという実情がある。見直し案では、この評価損を税務上も確実に損金として取り扱える方向で検討されているようである。
  まず、有価証券に対する会計上の取扱いと税務上の取扱いを簡単にまとめてみたい。有価証券は、金融商品会計基準により、その所有目的によって、売買目的有価証券、満期保有目的有価証券、子会社株式及び関連会社株式、その他有価証券の4種類に区分される。このうち、売買目的有価証券とその他有価証券については、時価評価しなければならない。
  また、市場価格のある有価証券の時価が著しく下落したときには、合理的な反証がない限り減損処理を行わなければならない。この場合、著しく下落したときというのは、取得価額に比べて50%以上下落した場合をいう。上場株式等を保有する法人は、現在この状態に陥っているところが多く、この3月決算でも多額の評価損が予想される。
●  税務上、時価評価できるのは売買目的有価証券のみ
  一方、税務上の取扱いは、会計上とは大きく異なる。税務上も、その所有目的によって有価証券が区分されるが、この場合の区分は3種類で、それぞれ売買目的有価証券、満期保有目的有価証券、その他有価証券となる。このうち、時価評価しなければならないのは売買目的有価証券のみで、残りの2種類の有価証券については、原則、取得原価で評価することとなっている。この点で、会計上と税務上の取扱いは異なる。
  例えば、その他有価証券を所有している法人が、会計上その株式を時価評価したとしても、税務上は取得原価で評価しなければならないため、税金計算時には、その評価減は否認されることになる。
●  税務上、損金として計上しきれない事情
  ただ、税務上も会計上と同じく、時価が著しく下落したときの評価減の規定は存在するため、この要件に該当すれば、税務上も損金計上することが可能になる。税務上、上場有価証券について評価減を計上できる要件は、「期末の時価が帳簿価額の概ね50%相当額を下回り、かつ、近い将来その価額の回復が見込まれない場合」となっている。このうち前半部分の要件は会計上とほぼ同じなのだが、実務上問題になるのは後半部分である。
  会計上は合理的な反証がない限り、減損処理をする、となっているのに対し、税務上は逆に、近い将来回復の見込みがないと認められる場合にのみ、評価損の計上を認めている。近い将来回復の見込みがないことを証明するのは非常に難しく、実務上は会計上で評価損を計上しても、税務上は自己否認して申告している法人が多いというのが実情である。今回の見直しは、それを名実ともに損金計上できるような取扱いを定める、という趣旨のようである。まだ決定事項ではないが、もし実現すれば、法人税への影響はかなり大きいものとなるので、今後の動きを注視していきたい。
(村田 直 マネーコンシェルジュ税理士法人)
2009.04.06
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