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春の「株高・円安」は一時的?
●  実体経済悪化でも株価上昇
  昨年9月のリーマン・ショック以降続いてきた「株安・円高」が一服し、「株高・円安」が世界経済の潮流になりつつある。外国為替市場では4月3日、約5カ月ぶりに円相場が1ドル=100円台に下落。株式市場では3月10日にバブル崩壊後最安値となる7,054円を付けた日経平均株価が4月6日には9,000円台寸前まで回復した。世界の金融市場では何が起きているのだろうか。
  まず確認しておきたいのが、実体経済はあまり良くなっていない、むしろ悪化しているという点だ。米国の3月の雇用統計では、失業率が1983年以来となる8.5%に悪化した。4月1日発表の日銀短観でも業況判断指数が大企業製造業でマイナス58と過去最悪の水準に落ち込んだ。今回の経済危機の震源地でもある米国の経済情勢が悪化し、日本などのほかの国にも悪影響が出る構図はまったく変わっていないといえる。
●  政策総動員が背景に
  それでも、経済の先行指標といえる株価が世界的に上昇しているのは、各国政府が政策を総動員して危機に対応するという姿勢を打ち出しているからにほかならない。その象徴となったのが、新興国も加えた20カ国・地域による「G20」金融サミットだ。2010年の世界経済の成長率を2%に回復させるため、財政出動など「あらゆる必要な行動」をとることで一致。各国の追加財政支出は来年末までに総額で500兆円規模にすると発表した。
  米国でも2大懸案だった金融機関と自動車問題が解決に向かいつつある。金融機関に対しては不良債権を買い取ることを軸とした「ガイトナー・プラン」が始動。GMなどの自動車産業に対しては、米オバマ大統領が政府管理下に置くこともちらつかせながら、リストラ強化策を迫っている。
●  期待先行、株高は長続きせず
  実体経済は依然として悪いが、官主導で株価が上昇してきているというのが、世界的な株価反転のメカニズムだ。日本だけ切り取っても状況は同じ。日本の場合、貿易赤字の拡大や景気低迷によって円安が進行した分、輸出産業の業績回復期待から株価がほかの国よりも勢い良く上昇している面もある。
  こうした実体経済を伴わない期待先行の株価上昇は、長期間続かないというのが筆者の考えだ。ここまで急落してきた株価が一転して上昇すると、相場が下落すると考えて信用売りをしてきた投資家が株を買い戻す必要があり、さらに上昇する傾向がある。現在はその局面だと考えられ、こうした買い戻しが終われば相場は反転下落することが多い。4月の中、下旬以降は日米で主要企業・金融機関の決算発表が始まる。ここでネガティブな情報が噴出すると株高が急速にしぼむ可能性がある。
  (この原稿は4月7日に書かれたものです)
2009.04.13
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