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株式の評価損の損金算入基準を明確化〜国税庁
●  問題は「近い将来回復が見込まれない」という実質基準
  国税庁はこのほど、「上場有価証券の評価損に関するQ&A」を公表し、企業が所有する上場有価証券の時価が帳簿価額に比べて50%以上下落し、会計上減損処理が行われた場合において、税務上その評価損を損金算入するにあたっての取扱いの明確化を図った。
  税務上、株式の価額が著しく低下し、帳簿価額を下回る場合は、その帳簿価額と時価の差額を損金経理によって減額し、評価損を損金算入することが認められている。
  この場合の「著しく低下したこと」について、法人税基本通達では、(1)株式の期末の価額がその時の帳簿価額のおおむね50%相当額を下回ること(形式基準)になり、かつ、(2)近い将来その価額の回復が見込まれないこと(実質基準)をいうものとされている。問題となるのは、(1)はさておき、(2)の株価の回復可能性の検証であって、どのような状況であれば、「近い将来回復が見込まれない」と言えるのかである。
●  法人の側が提示する合理的な判断基準を尊重
  そこでQ&Aでは、株価の回復可能性がないことについて、法人の側から、過去の市場価格の推移や市場環境の動向、発行法人の業況等を総合的に勘案した合理的な判断基準が示される限りにおいては、税務上はその基準が尊重されることを明らかにしている。したがって、必ずしも株価が過去2年間にわたり帳簿価額の50%程度以上下落した状態でなければ損金算入が認められないものではないと説明している。
  さらに、法人が独自にこの株価の回復可能性に係る合理的な判断を行うことは困難な場合もあると考えられるため、株式発行法人に係る将来動向や株価の見通しについて、専門性を有する客観的な第三者の見解があれば、これを合理的な判断の根拠のひとつとすることを認めている。
  具体的には、専門性を有する第三者である証券アナリストなどによる個別銘柄別・業種別分析や業界動向に係る見通し、発行法人に関する企業情報などを用いて、その株価が近い将来回復しないことについての根拠が提示されれば、これらに基づく判断は合理的な判断であると認められるとの考えを示している。
●  翌事業年度以降に株価が上昇しても是正する必要はなし
  株価の回復可能性の判断の時期は難しいものがある。株式の時価が大幅に下落し、その事業年度末における株価が帳簿価額の50%相当額を下回る状況にあり、その期末において合理的な判断に基づいて株価の回復可能性を判断した上で、その株式の評価損を損金算入したが、その事業年度以降に株価が上昇した場合は、評価損として損金算入した処理をさかのぼって是正する必要があるのかという疑問が生ずる。
  しかし、Q&Aは、その事業年度末においては将来的に回復が見込まれないと判断して評価損を計上した場合に、翌事業年度以降に株価の上昇などの状況の変化があったとしても、そのような事後的な事情は、その事業年度末時点における株価の回復可能性の判断に影響を及ぼすものではなく、その事業年度に評価増として損金算入した処理をさかのぼって修正する必要はないと回答している。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2009.04.20
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