>  今週のトピックス >  No.1835
中小企業緊急雇用安定助成金の活用状況の推移
●  雇用調整助成金制度を見直し、中小企業向けの制度がスタート
  少し前の話になるが、昨年12月に当面の措置として、中小企業緊急雇用安定助成金制度がスタートした。従来の雇用調整助成金制度を見直し、中小企業主を対象に、景気の変動や産業構造の変化その他の理由により事業活動の縮小を余儀なくされたり、その雇用する労働者を一時的に休業、教育訓練または出向させたりした場合に、休業・教育訓練、または出向にかかわる手当てもしくは賃金の一部を助成するという内容である。
  主な支給要件としては、雇用保険適用の中小企業であり、次の(1)、(2)をともに満たすことが必要である。
  (1)  最近3カ月の売上高または生産量が、その直前3カ月または前年同期比で減少している、かつ、前期決算等の経常損益が赤字であること(生産量が5%以上減少の場合は不要)
  (2)  従業員の全一日の休業または事業所全員一斉の短時間休業、および教育訓練、または3カ月以上1年以内の出向を行うこと
  支給額は、休業の場合には休業手当相当額の5分の4(上限あり。支給限度日数は3年間で300日、最初の1年間で200日)、教育訓練を行う場合はさらに一人一日あたり6,000円を追加、出向の場合は出向元で負担した賃金の5分の4(上限あり)となっている。
  またさらに、
  ・ 判定基礎期間(賃金締切期間)の末日における事業所労働者数が、比較期間(初回計画届提出日の属する月の前月からさかのぼった6カ月間)の月平均事業所労働者数と比して5分の4以上であること
  ・ 判定基礎期間とその直前の6カ月の間に事業所労働者の解雇等(有期契約労働者の雇止め、派遣労働者の事業主都合による中途契約解除を含む)をしていないこと
  以上の要件を満たしている場合には、助成率が上乗せされ、10分の9となる。国としても中小企業の事業活動の活性化とその前提となる雇用維持の実現を重視していることが、十分にうかがえる内容となっている。
●  休業等実施計画届の受理数が大幅に増加
  当制度活用のための手続きとして、都道府県労働局またはハローワークへの「休業等実施計画届」の事前提出が必要であるが、厚生労働省からは休業等実施計画届の各都道府県別受理状況が公表されている。速報値のため訂正の可能性はあるが、制度のスタートした昨年12月は、事業所数1,690、対象者数100,875名に対し、翌月の本年1月には、事業所数11,847と前月の7倍超、対象者数も589,801名と6倍近くにまで増加している。
  もっとも、大企業も対象にした本体の雇用調整助成金も合計した受理状況をみても、それまででもっとも受理数の多かった昨年11月(事業所数199、対象者数8,873名)の実績と比較して、新制度創設後の状況(昨年12月/事業所数1,783、対象者数138,549名、本年1月/事業所数12,640、対象者数879,614名)は、この時期にいかに急激な景気の冷え込みと企業活動を取り巻く環境が悪化していたのかをうかがい知る結果と思われる。まさに派遣切りなどの現象が大きな社会問題となった時期にも重なる。ある特定の制度の動向ではあるが、雇用情勢の厳しい現実をうかがう材料の一つといえよう。
出所:厚生労働省「中小企業緊急雇用安定助成金」
    http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/a01-2.html
厚生労働省「雇用調整助成金等に係る休業等実施計画届受理状況及び大量雇用変動届の提出状況について」
    http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/02/h0227-6.html
2009.05.11
前のページにもどる
ページトップへ