>  今週のトピックス >  No.1837
少子化対策には、働き方の見直しが必要不可欠
●  日本は、世界で年少人口の割合が一番低い
  内閣府は4月17日、「平成21年版 少子化社会白書」を発表した。白書によると日本の年少人口(0歳から14歳まで)の、総人口に占める割合は13.5%(2008年10月現在)と、世界的にみて最も低くなっている。一方で老年人口(65歳以上)の、総人口に占める割合は22.1%となっており、少子高齢化はより一層進んでいることが明らかになった。
  また、白書では最近の少子化の現状や今後の見通しについて細かく説明されており、少子化対策として、若年の就労支援や働き方の見直しによるワーク・ライフ・バランスの推進とその社会的基盤となる「包括的な次世代育成支援の枠組みの構築」を「車の両輪」として、同時並行的に取り組んでいくことが必要不可欠であるとまとめている。
●  出産を機会に退職するのは、約7割という現状
  現在の急速な少子化の進行の背景の一つに、「働き方をめぐるさまざまな課題」が存在している。出産前に仕事をしていた女性の約7割が出産を機に退職しており(兄弟数1人の場合)、育児休業制度の利用は増えてはいるものの、出産前後で就労継続している女性の割合は、この20年間ほとんど変化がない。この約7割もの女性が出産前に退職してしまっているという事実については、本人は働きたくても、企業側の受け入れ態勢や風土、そして仕事の内容や労働時間などを考えて、やむを得ず退職しているという人の割合が高いのではないかと推測される。
  大企業に限らず中小企業でも、その柔軟性をうまくいかしてさまざまな働き方を尊重し、働く人のモチベーションをアップさせ、全員で協力し合って、結果的に業績をあげている企業もある。政府は今後も短時間正社員制度や在宅勤務制度をはじめとするテレワークの推進に力を入れていくとしており、各企業もライフスタイルの変化に合わせた働き方を積極的に導入し、優秀な人材が退職しない仕組みを構築していく必要がある。
●  男性の育児休業の取得率は、わずか1.56%
  少子化は、女性の働き方だけの問題ではない。育児休業を取得したいと希望する男性は、3割を超えているにもかかわらず、男性の育児休業取得率は1.56%(2007年)にとどまり、男性の育児・家事の時間も、欧米諸国と比較しても極端に低い水準にとどまっているというのが実態である。このような状況を踏まえ、政府は、「パパの育児休業体験記」を募集し、育児休業取得から復帰までの実践のロールモデルの普及のためにいろいろなアクションを起こしている。また男女ともに仕事と子育てを両立できるような雇用環境の整備を目指して、子育て期の短時間勤務制度の義務化やいわゆる「パパ・ママ育休プラス」の導入など、育児・介護休業法についても見直しを行っている。
  いずれにしても法律や制度が整備されても、育児休業を取りにくい職場環境であれば、それは大きな障壁となってしまう。男性の育児休業の取得状況については法的な枠組みや企業の制度も大事であるが、それ以上に大事なのは社長をはじめとする経営陣の意識と社内の雰囲気ではないだろうか。
出典:内閣府「平成21年版 少子化社会白書」
    http://www8.cao.go.jp/shoushi/whitepaper/index-w.html
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、
庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2009.05.11
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