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ストレステスト通過し、日経平均が半年ぶりに9,400円台回復
●  悲観シナリオで損失60兆円
  日経平均株価は5月8日、約半年ぶりに9,400円台を回復した。きっかけは市場にとって最大の懸案事項だった米大手金融機関の資産査定、いわゆるストレステストをほぼ想定の範囲内で通過したことだった。ただこの査定の内容が楽観的という声もあり、筆者は一段の株価上昇に懐疑的な見方をしている。
  ストレステストは米政府・米連邦準備理事会(FRB)が大手金融機関19社を対象に実施した資産査定で、5月7日に発表した。向こう2年間経済環境が一段と悪化することも想定し、潜在的な損失や自己資本の不足額を算出した。この「悲観シナリオ」下での19社の合計予想損失額は約60兆円と推計。資本増強が必要と指摘されたのはバンク・オブ・アメリカ、シティグループなど19社中10社で、資本不足の合計額は7兆円強となった。
●  楽観的な査定内容
  合計損失額などの公表数値は事前予想の範囲内で、厳しい予想も考慮していた投資家の心理は大きく改善した。投資家の不安心理を反映するといわれるシカゴ・オプション取引所のVIX指数は8日、30台前半まで下げ、昨年9月のリーマン・ショック前の水準に接近した。絶対水準としてはまだ高いが、昨年10月に90近くまで上昇していたことを考えると、かなり下がったと言える。日米株価は悪材料の出尽くし感から大きく上昇した。
  ただ「悲観シナリオ」の前提は2009年の平均失業率を8.9%と想定している。8日に米労働省が発表した4月の雇用統計によると、失業率(軍人を除く)は前月より0.4ポイント高い8.9%と、悲観シナリオと同じ水準まで上昇してしまった。オバマ大統領は同日の演説で「さらなる失業を覚悟しなければならない」と述べており、失業率は今後も上昇する可能性が高い。失業者が増えれば、金融機関のローン回収が遅れ損失は膨らむ。ストレステストが、本当に金融機関が耐えうる「ストレス」をテストしたものなのか、と疑問が出てもおかしくない。
●  日本企業の業績悪化
  日本ではトヨタ自動車が71年ぶりに営業赤字に転落し、2010年3月期も赤字額が拡大する。年内に景気が回復するという楽観シナリオを描く経営者はほとんどいないのが実情だ。そんななかで足元の株高が持続するとは考えにくい。筆者は一時的に株価が上昇しても利益確定売りに押し戻される展開を予想している。
(この原稿は5月12日に書かれたものです)
2009.05.18
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