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30歳代の自殺者が過去最悪を記録
〜警察庁「平成20年中における自殺の概要」〜
●  自殺が若年層で増加
  警察庁から5月14日に発表された「平成20年中における自殺の概要」によると、平成20 年中における自殺者の総数は32,249人で、前年に比べ844人(2.6%)減少したものの、初めて3万人を超えた平成10年から11年連続で3万人を超え高止まりしている。性別では、男性が22,831人で全体の70.8%を占めた。
  年齢別にみると「50歳代」が6,363人で全体の19.7% を占め、次いで「60歳代」(5,735人、17.8%)、「40歳代」(4,970人、15.4%)、「30歳代」(4,850人、15.0%)の順となっており、この順位は前年と同じである。しかし前年と比べると「40歳代」が5,096人から4,970人、「50歳代」が7,046人から6,363人と減少しているのに対し、「20歳未満」が548人から611人(11.5%増)、「20歳代」が3,309人から3,438人(3.9%増)、「30歳代」が4,767人から4,850人(1.7%増)に増加するなど、若年層の自殺者が増加している点が目立つ。特に「30歳代」は、バブル期(平成3年、2,391人)の2倍以上となり、2年連続して過去最悪を記録している。
●  不況が背景か? 就職失敗・失業・生活苦が大幅に増加
  原因・動機が明らかなもののうち、その原因・動機が、「健康問題」にあるものが15,153人で最も多く、次いで「経済・生活問題」(7,404人)、「家庭問題」(3,912人)、「勤務問題」(2,412人)の順となっており、この順位は前年と同じである。なお、健康問題の中では「病気の悩み(うつ病)」が6,490人で、総数の中でも最も多くを占めている。
  前年と比べ大きく増加した自殺原因をみてみると、「就職失敗」が180人から253人(40.6%増)、「失業」が538人から648人(20.4%増)、「生活苦」が1,137人から1,289人(13.4%増)と、昨今の厳しい雇用・経済情勢が色濃く反映された結果となっている。
  30歳代の自殺原因は、「病気の悩み(うつ病)」が1,204人で最多であるが、増加率では、「就職失敗」が51人から69人(35.3%増)、「仕事の失敗」が78人から103人(32.1%増)、「事業不振」が64人から83人(29.7%増)、「職場の人間関係」が144人から181人(25.7%増)、「生活苦」が131人から164人(29.7%増)となっている。
●  今年に入っても増加傾向
  警察庁は今年から、予防対策に役立ててもらうため毎月の自殺者の公表を始めたが、今年に入っても3月末までに8,198人と前年同期の7,889人より309人多く、3.9%増加している。年齢別や動機別などの詳細なデータはこれまで通り年1回の公表となるが、最近の厳しい雇用・経済情勢や平成20年の自殺原因における就職失敗・失業・生活苦の大幅な増加を考えると、自殺者数が今後さらに増加する可能性もあるだろう。
  関係団体には、直近のデータを有効に活用した、効果的な対策を望むところである。
2009.05.25
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