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追加減税法案が衆院通過だが、中小企業には恩恵少ない?
●  減税額は試験研究費450億円、交際費200億円、相続税0円
  政府の「経済危機対策」に伴い4月27日に国会へ上程された、
(1)実父母や実祖父母などの直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合に贈与税の非課税制度の創設
(2)研究開発税制の拡充
(3)交際費等の損金不算入制度の見直し
  を盛り込んだ追加減税法案(租税特別措置一部改正法案)が、5月13日に衆院財務金融委 員会で可決後、同日本会議で採決され賛成多数で可決成立し、参院に送られた。
  同法案の審議は、5月8日から始められたものの、実際の審議は同日と5月12日のたった2日間しか行われなかったが、その中でも改正項目について明らかになったことがいくつかある。
  まず、減収額についての質問に加藤財務省主税局長が「試験研究費関係で450億円、交際費関係で200億円、贈与税の非課税関係では現行制度の下では非課税枠を超えた住宅資金の贈与が生じているケースは少ないため僅少(0円)となる」と答弁し、減税規模は当初の試算より少ないことが明らかになった。
●  400万円超の交際費を支出できる中小企業は全体の1.3%程度
  個別の改正項目をみると、中小企業に期待される追加経済対策としては、資本金の額または出資金の額が1億円以下である法人等を対象に年間400万円(定額控除限度額)までの交際費等支出額の90%の損金算入を認める交際費等の損金不算入制度における定額控除限度額を2009年4月1日以後に終了する事業年度分の法人税から600万円に引き上げる中小企業の交際費等の損金不算入特例の拡充がある。
  しかし、民主党の階議員が400万円超の交際費を支出できる企業は全体の1.3%程度に過ぎないと指摘したこと、竹下副大臣が資本金5千万円以上1億円未満の中小企業の交際費支出額が平均470万円であることを引上げの根拠としたこと、さらに今回の措置は「交際費支出を拡大できる余力のある中小企業が適用を受ける仕組みとなっている」と加藤主税局長が答弁したことから、ほとんどの中小企業が恩恵を得られないことが明らかになった。
●  試験研究費は大半が資本金10億円以上の法人の適用
  試験研究費の総額に係る税額控除制度については、平成21、22年度に税額控除できる限度額を当期の法人税額の30%(現行20%)に引き上げるとともに、21、22年度に生じる税額控除限度超過額を23、24年度において税額控除の対象とすることを可能とする研究開発税制が拡充された。この研究開発税制に関しては大企業中心ではないかとの共産党の佐々木議員の質問に対し、岡本国税庁次長は、「研究開発税制の税額控除の適用額は、平成19年度分会社標本調査に基づき試算すると、資本金1億円未満の法人が170億円、1億円以上の法人(連結子会社を含む)が6,099億円。また、1億円以上10億円未満の法人が500億円となっていることから、大半が資本金10億円以上の法人の適用となっている」と答弁し、制度が大企業中心であることを認めている。
  また、平成21年および22年の2年間に直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合に500万円まで贈与税を非課税とする制度の創設では、竹下財務副大臣が「住宅金融支援機構の『フラット35』の利用者で住宅取得の際の頭金として準備した金額は500万円未満が圧倒的に多かったことが非課税枠を500万円とした根拠」であることを民主党の鈴木(克)議員の質問に答えている。
  これから野党が過半数を占める参院へ舞台は移るが、補正予算の成立の関係もあり、会期延長となるだろう。延長後、野党が参院で審議を引き延ばしても、最終的には憲法の規定により衆院通過60日後の7月中にも与党の3分の2以上の賛成で再可決することにより成立となる。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2009.05.25
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