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国民健康保険料未納率が1割突破
●  「払わない」ではなく「払えない」人が増加
  国民健康保険(国保)の保険料未納率が、2008年度(2008年4月〜09年3月)は1割を超える見通しになったそうだ。国民年金の場合、「将来の年金がもらえるかどうかわからないから、保険料を払わない」という人が多いが、国保は、病気やけがですぐに役立つ制度であり、未納により被るデメリットは大きい。それでも未納率が上昇したのは、「払わない」ではなく「払えない」人が増えたということだと思われる。
  国民健康保険料が払えなくなるのは、保険料の負担が重いから。サラリーマンが加入する健康保険(健保組合や協会けんぽ)では、保険料は労使折半となるので、加入者は本来の半分の負担で済む。しかし国保の保険料は全額自己負担なので、健康保険から国保に変わった人は負担の大きさに驚くだろう。
●  国保保険料の計算方法
ところで国保は自治体が運営主体となるが、保険料の計算方法も自治体ごとに異なる。
  (1) 世帯ごとの「平等割(世帯割)」
  (2) 被保険者1人あたりの「均等割」
  (3) 被保険者の所得や住民税に応じた「所得割」
  (4) 固定資産税基準の「資産割」
  という4つの要素で計算された保険料の合計額が、世帯主に国民健康保険料(保険税という自治体もあり)として請求される。「平等割」と「資産割」は採用していない自治体もある。 また国保では従来、「医療分」と「介護分(40歳以上)」について保険料を徴収していたが、後期高齢者医療制度の導入に伴って、「後期高齢者支援分」という新たな項目が設けられた。今後高齢者が増えると、この項目の負担も増えていくかもしれない。
●  保険料差が2倍の地域も
  前述のようにして算出される国保保険料だが、計算方法や料率が異なることにより、同じ条件でも自治体ごとに大きな差が出てくる。夫婦ともに30代で子ども2人、夫の給与収入400万円(会社に社保なし)、妻無職、住まいは賃貸という条件で、国保の年間保険料をみてみよう。
  A.東京都西東京市   約21万円
  B.大阪府大阪市      約40万1,000円
  C.福岡県福岡市      約44万6,000円    ※8〜10回程度に分けて支払う。
  東京のベッドタウン西東京市は年21万円(対年収5%)で、安くはないがまあ払えるかなというレベル。しかし、大阪市は年40万円(対年収10%)、福岡市では年44万円(対年収11%)と、この年収クラスでは税金の負担より重くなってしまう。未納者が増えるのも理解できる。未納者が増えれば国保財政が悪化し、再び保険料率を上げる、さらに未納者が増える…、という悪循環に陥る恐れもある。
  国民年金に引き続き、国民健康保険の未納問題も大きな議論を巻き起こしていくだろう。すでに、自治体ごとの問題では済まなくなってきている。医療制度改正問題と相まって私たちの生活に直結する分野なので、引き続きウォッチしていきたい。
(山田静江 CFP®)
2009.06.01
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