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2008年分所得税の納税額は5年ぶりに減少
●  所得税の確定申告書提出者は10年連続で過去最高を更新
  国税庁が5月21日に発表した2008年分所得税等の確定申告状況によると、所得税の確定申告書を提出した人は前年を0.3%上回る2,369万3千人となり、10年連続で過去最高を更新した。しかし、所得税の申告納税額は、前年を11.6%下回る2兆6,495億円と、5年ぶりに減少した。減少率は1998年分(15.9%減)以来10年ぶりの水準。景気悪化の影響で地価や株価が下落し譲渡所得が大幅に影響したことが要因とみられる。
  確定申告書提出者のうち、申告納税額がある人は、前年に比べ3.2%減の752万3千人で、その所得金額も8.5%減の39兆5,940億円となり、それぞれ3年連続、2年連続で減少した。11.6%減で2兆6,495億円となった申告納税額は、ピークの1990年分(6兆6,023億円)の約40%にあたる。なお、還付申告者数は、前年を1.1%上回る1,283万6千人となり、4年連続で過去最高を更新し、申告者全体の約54%を占めた。
●  株式等譲渡所得の申告所得は46%減の大幅減少
  所得税申告者のうち、株式等譲渡所得の申告者は1.6%減の89万人5千人、うち所得金額がある人が55.3%減の18万7千人、所得金額は46.0%減の1兆3,026億円。これらの株式等譲渡所得の申告者を除く土地等の譲渡申告者も9.4%減の45万9千人、うち所得金額がある人は12.0%減の25万人、所得金額は23.7%減の3兆2,197億円と、株式等譲渡所得とともに大幅に減少している。
  なお、2008年分の贈与税の申告者は、前年に比べ9.2%減の34万7千人、うち納税額がある人は7.1%減の23万6千人、その納税額は3.3%減の1,025億円だった。1人あたりの納税額は43万円。贈与税の申告者のうち、相続時精算課税制度に係る申告者は17.0%減の7万4千人、うち納税額があった人は13.7%減の4千人、申告納税額は32.6%減の184億円。ほとんどが2,500万円(住宅取得資金3,500万円)の非課税枠内だった。
●  IT利用の申告書提出人員が35%増の大幅増加
  上記のように、近年は納税者が増加傾向にある。こうした年々増加する納税者数への対応として国税庁は、確定申告の基本方針として「自書申告」を推進しており、そのためのIT(情報技術)を活用した施策に積極的に取り組んでいる。
  国税庁のホームページ上で申告書が作成できる「確定申告書等作成コーナー」やe−Tax(国税電子申告・納税システム)など、ITを利用した所得税の確定申告書の提出人員は807万7千人にのぼり、2007年分より34.6%増加し、所得税の確定申告書の提出人員(2,369万3千人)に占める割合は34.1%にまで上昇している。2007年分からは税務署を訪れる納税者にも利用できるように、相談会場にパソコンを設置したことが、IT利用を促進させた。
●  e−Taxによる申告件数は54%増の大幅増加
  署でのIT利用は、パソコンで申告書を作成して「e−Tax」が331万人、同「書面での提出」が49万8千人の計380万8千人と前年度に比べ37.7%増。また、自宅などでのIT利用は、「HP作成コーナーで申告書を作成して書面での提出」が197万7千人、「同e−Tax」が35万9千人、「民間の会計ソフトで申告書を作成してe−Tax」が193万3千人の計426万9千人と同32.0%増となり、ともに大幅に増加した。
  一方、全国拡大後5回目の確定申告となるe−Taxは、(1)最高5,000円の税額控除、(2)添付書類の提出省略、(3)書面提出に比べ還付金を早期還付、などのメリットを積極的に広報するなどの普及拡大に努めた結果、所得税の申告件数が前年の363万4千件から560万2千件へと54.2%の大幅増加となった。これは、所得税の確定申告書の提出人員全体の23.6%にあたる。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2009.06.01
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