>  今週のトピックス >  No.1853
個別労働紛争の相談件数、過去最多の約24万件
●  総合労働相談の件数は、約108万件
  厚生労働省が5月22日に発表した2008年度における「個別労働紛争解決制度」の施行状況によると、昨年度後半以降の経済・雇用情勢の急速な悪化等を反映し、全国の総合労働相談コーナーに寄せられた民事上の個別労働紛争の相談件数は23万6,993件(前年度比19.8%増)で過去最多となった。
  全国の総合労働相談コーナーに寄せられた総合労働相談の件数は約108万件(前年度比7.8%増)とついに100万件を超えた。注目すべき点は、やはり民事上の個別労働紛争の相談件数の増加率が急激にアップしたことである。民事上の個別労働紛争とは労働基準法上の違反を伴わない解雇、労働条件の引下げ等であり、労働基準監督署などの役所が介入できないため、総合労働相談センターのような窓口は重要な役割を果たすことになる。
●  解雇に関する相談が最も多く25.0%を占める
  相談内容は、やはり解雇に関するものが最も多く25.0%、労働条件の引き下げに関するものが13.1%、いじめ・嫌がらせに関するものが12.0%と続き、解雇、労働条件の引き下げ、退職勧奨等の割合が増加した。
  解雇の中でも整理解雇に関するものの伸びが特に著しくなっている。整理解雇については、この経済不況により中小企業はやむを得ず実行しているケースもあるが、法律を知らないのは仕方がないとして、誰にも相談しないのは大きなリスクである。整理解雇については、たくさんの判例があり、原則として整理解雇をするためには概ね4つの要件を満たしていなければ解雇は無効となってしまうからである。実際労働者から民事訴訟されてしまい、解雇無効とされてしまうケースも過去にたくさんあり、そのようなことになれば、経営者は精神面での大きな打撃を受けると共に、多大な解決金を支払うという金銭的負担を強いられることにもなってしまうので注意が必要である。
●  派遣労働者や期間契約社員の個別労働紛争に係る相談割合が増加
  また、民事上の個別労働紛争に係る相談者は、労働者(求職者)が80.5 %と大半を占めており、事業主からの相談は12.5%であった。大半は、労働者(求職者)からの相談になるが、使用者も行き場がなく、労使で解決できないため第三者に間に入ってもらい円満に解決を望んでセンターにやってくるケースもある。
  労働者の就労状況は、正社員が46.0%と最も多いが、パート・アルバイトが16.3 %、派遣労働者が8.3%、期間契約社員も8.3%を占めており、前年度と比較すると正社員およびパート・アルバイトの割合が若干減少し、派遣労働者、期間契約社員の割合が増加した。
  紛争調整委員会による「あっせん」の受理件数は、8,457件で、そのうち当事者間の合意が成立したものは、2,647件に過ぎない。
  個別労働関係紛争に係る「あっせん」は、個々の労働者と事業主との間の労働条件などを巡る問題について、自主的な解決が困難になった場合、当事者の申請に応じて、話合いがまとまるように手助けしてくれる制度であるが、実際は相手があっせんに応じない場合や、労使の主張が食い違いあっせん案に応じず、打ち切りになったりすることも多く、ここだけでは解決されないことも多い。しかしながら裁判と違って敷居が低い点、無料である点、プライバシーが守られる点などのメリットも多く、迅速な解決を望むような場合には、やはり利用価値は高く、今後もっといい意味で利用者が増加することに期待したい。
出典:厚生労働省「平成20年度 個別労働紛争解決制度施行状況」
    http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/05/h0522-4.html
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、
庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2009.06.08
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