>  今週のトピックス >  No.1854
日税連、2010年度税制改正に関する意見書を決定
〜中長期的視点からの検討課題も提示〜
●  最重要な改正要望事項を26項目に集約
  日本税理士会連合会(池田隼啓会長)はこのほど「2010年度税制改正に関する建議書」を正副会長会の協議を経て決定した。今回の建議では、池田会長が建議形式の見直しを指示したことに伴い、最重要な改正要望事項として26項目に集約するとともに、従来の税制改正建議項目とは別に、中期的な視点に立って継続して検討すべき3項目についての基本的な考え方を示している。
  主な建議項目では、
(1)高額給与所得者の給与所得控除額は、一定の限度額を定めること
(2)勤続1年当たりの退職所得控除額を勤続年数に関係なく一定額とするとともに、退職所得の2分の1課税方式を改め、勤続年数に応じた方式に変更すること
(3)居住用財産の譲渡損失は、住宅借入金等の有無にかかわらず、損益通算及び繰越控除を認めること
(4)特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度を廃止すること
が盛り込まれている。さらに、
(5)交際費課税における交際費等の範囲を見直し、社会通念上必要な交際費等の支出は原則として損金算入するとともに、定額控除限度額内の10%課税制度は即時に廃止するこ と
(6)受取配当等は、全額を損金不算入とすること
(7)同族会社等の行為計算の否認規定における「税の負担を不当に減少させる結果」の意義を法令で明確にすること
(8)相続税の連帯納付制度を廃止すること
(9)小規模宅地等の課税価格の特例については、その小規模宅地等が未分割であっても、50%減額の適用を認めること
などが主な建議項目である。
●  法人税の課税ベースの拡大は企業の事務負担の増大に配慮すべき
  また、中期的な視点からの検討課題としては、
(1)法人税の課税ベースの拡大と税率引下げについて
(2)消費税の改正について
(3)納税者番号制度の導入についての基本的考え方
を示した。
  (1)の法人税の課税ベースの拡大と税率引下げについては、会計基準と税制の関係を考慮しながら、課税ベースの拡大については慎重に検討を行っていく必要があるが、その際、企業会計とは別に税務上の利益を算定するための帳簿作成や申告事務など企業での事務負担が増大し複雑な税制になるという問題を十分考慮すべきだとした。
  (2)の消費税の改正については、その税率水準を1%引き上げるだけで約2.5兆円もの税収を生み出すものであり、高齢社会における財源として注目されているとした上で、しかし、それは国民全体が負うものであり、税率の引上げは、歳出の見直しや行政の合理化、税体系のあり方について慎重かつ十分な検討を行い、国民の理解を得た上で行う必要があるとの考えを示している。
●  納税者番号制度、税務目的以外の利用は禁止
  (3)の納税者番号制度の導入にあたっては、まず情報保護制度をどのように構築するかが極めて重要な問題となるが、現行の行政機関個人情報保護法では、相当な理由がある場合には不開示情報とされていることから、少なくとも納税者番号により収集された法定調書などの税務情報は開示対象とし、本人による情報アクセスと情報訂正請求を認め、税務目的以外への利用は禁止しておくべきである。
  また、導入にあたっては、制度の仕組み、付番方式、付番機関などの具体的な内容を示した上で、導入や維持に要する行政コストや民間の負担コストを試算し、費用対効果の面からも十分に検討すべき必要があるとしている。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2009.06.08
前のページにもどる
ページトップへ