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FX、レバレッジ規制で円高・株安?
●  金融庁、25倍に制限
  個人投資家が手軽に外国為替を取引できる外国為替証拠金取引(FX)で、金融庁がこれまで無制限だった「証拠金倍率」(レバレッジ)を25倍に規制する方針を示している。これまでは顧客投資家が差し入れた証拠金の100倍以上の取引も可能だった。投資家保護のため規制自体は必要だが、取引の自由度を損なう可能性もあり、FX市場から投資家が逃げ出す恐れもある。
  FXでは顧客が差し入れた証拠金にレバレッジをかけて取引できることが最大の魅力だ。例えば10万円の証拠金で100倍のレバレッジをかけると、1ドル=100円のレートのときに10万ドル(1,000万円相当)を買うことができる。仮に1ドルが101円に上昇すれば、持ち高は10万1,000ドルに膨らみ、1,000ドルの為替差益を得られる。
  逆に1ドルが99円に下落すれば持ち高は9万9,000ドルとなり1,000ドルの為替差損が発生する。証拠金として差し入れた10万円分の損失が出たため、取引は強制的に終了させられる。つまり、レバレッジをかければかけるほどハイリスク・ハイリターンになるわけだ。
●  取引の自由度損なう恐れ
  金融庁はこうした傾向を問題視し、来年夏ごろにもレバレッジを50倍に制限。翌2011年夏をメドに25倍まで引き下げる方針だ。投資家にとっては利便性が低下するため、規制のゆるい海外の業者に取引先を変えたり、ほかの金融商品に変えたりすることも考えられる。FX業者にとっては、高レバレッジで回転売買する顧客は手数料が稼げるため、規制が導入されれば相当な痛手となり、市場から撤退するところも出るだろう。
  外為市場ではFXを通じた個人の取引高はかなりのボリュームになっている。日銀の調査によると、FXの1日当たりの円・ドル取引高は約3.6兆円。全世界の円スポット取引高と比べ、実に15%に相当する。しかし、今回の規制によって「取引高は半減する」とみる専門家もいる。
●  潜在的な円高要因に
  個人投資家は基本的に円相場が円高に振れると、円を売って割安になった外貨を買う取引を膨らませてきた。円が安くなったら外貨を売って円を買い戻し、差益を得る投資手法だが、こうした取引は自然と過度な円高を和らげる働きをしてきた。問題はレバレッジ規制によって「円高の緩衝材」となっていた個人の取引が減少してしまうかもしれない点にある。
  過度な円高が進むようだと、輸出産業が主体の日本株には常に下押し圧力として働く。日本の株式市場はまた一つ潜在的なマイナス要因を抱え込むことになった。
2009.06.15
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