>  今週のトピックス >  No.1861
産業カウンセラーの約7割が、
メンタルヘルス不調者「増加」と指摘
●  経済不況はメンタルヘルス不調者の増加に大きな影響を与えている
  社団法人日本産業カウンセラー協会は、経済危機において職場でどのような事態が起こっているのかについて、4月から5月にかけて緊急のアンケートを実施した。136 名より回答を得て、5月27日にその調査結果を発表した。
  今回の調査は、経済状況の悪化に伴う職場の変化について明らかにするため、過去1年間に限定した職場のトラブル事例について、「雇用」「賃金」「福利厚生」「メンタルヘルス」の4 分野にわたって尋ねた。雇用、賃金および福利厚生については、この経済不況により従来ではあまり考えられなかったことが実際に起こっているようである。退職の強要や出向を含めた部署のたらいまわしという悪質な手法を使っている企業もあるようだ。
  このような状況が、メンタル不調者の増加に大きく影響し、それらが、また職場の雰囲気などを悪化させることにもつながっていると推測される。各企業の経営陣や人事担当者などは、自社の状況をあらためて確認するよい機会ではないだろうか。
●  相談ケースが多い、「非正規社員の一方的な契約解除」
  この経済不況により、「雇用」については、41.2%の産業カウンセラーが、「非正規社員の一方的な雇用契約解除」の事例経験があると答え、以下「退職勧告・ほのめかし」(39.0%)等が続いている。そのような状況の中では、労働者が次々と退職していくことになり、そのしわ寄せが残った社員にくることが多い。人員不足の中、やむを得ず過重労働でカバーしているため、劣悪な職場環境になっていることも少なくない。それにもかかわらず残業代の未払いや、賃金の引き下げなどでメンタル不調になってしまうケースも時折みられる。
  実際、今回の調査でもそうした状況が、「メンタルヘルス不調者の増加」(70.6%)につながっていることは明らかであると指摘しており、経済不況はメンタル面に大きく影響していることが読み取れる。
  実際の職場の現状といえば、業績が悪化と同時にさらにコミュニケーションが希薄になり、心に余裕がなくなるとともに、社内ではいじめやけんかなどが発生してしまうこともある。まさに負の連鎖であるが、予防のためにも社内の職場環境のチェックなどは定期的に行い、風通しのよい社内風土づくりを強く意識する必要がある。いずれにしても会社側に快適な職場環境を提供する義務があるということを忘れてはならない。
●  経済不況時こそ「ワークライフバランスの導入・推進」が重要
  経済不況時に起こる、こうした職場トラブルや不利な取り扱いを受ける対象は誰なのか、対象者の属性について聞いたところ、最も多かったのは「女性」(61.0%)だった。「育休切り」の相談が増加しているという厚生労働省の別の調査結果もあったが、今回のアンケートでも「育児や産休女性に対する不利な取り扱い」事例は14.0%と比較的高い割合を占めている。また「正社員」対象事例52.9%、「派遣社員」44.9%に続き、若いスタッフ確保後の嫌がらせなど、「中高年層」を対象とするものが41.9%にも上っている。「障害者」対象事例も13.2%あり、厳しい職場環境のしわ寄せが正社員にも及んでいると同時に、職場内の弱者がさまざまな形で不利益を受けていることも明らかになった。
  経済危機を受けて、雇用や働き方など、労働者をめぐって新しい取り組みや工夫が模索されているが、これからの勤労社会において、重要・有効と考えられることは何かという質問に対してトップは「ワークライフバランスの導入・推進」(64.0%)となった。まずは、積極的なアクションを起こし、社長または労働者が何らかの新しい取り組みにすぐに着手していき、その活動の中で理想的な方向へ進めるよう皆で一緒になって考えていくのがよいのではないだろうか。
出典:社団法人日本産業カウンセラー協会「産業カウンセラーが見た職場/
「経済危機と職場の現状」に関するアンケート結果」
      http://www.counselor.or.jp/media/kekka/pdf/090527.pdf
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、
庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2009.06.22
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