>  今週のトピックス >  No.1865
株価回復は個人が支える?
  昨年来の景気後退で、今年3月には7,021.28円まで下がった日経平均株価は、不景気だと言われながらも、気が付けば9,000円台を回復。6月12日には10,170.82円の年初来最高値をつけた。米国や中国の景気対策への安心感、日本経済の景気底打ち感など要因はさまざまだろう。こうやって株価が緩やかに上昇していくと、このまま景気が回復していくかもしれない、と期待したくなる。この期待感が投資意欲を刺激して、個人投資家の資金を呼び込んでいるようだ。景気の「気」は気持ち。個々人のちょっとした心持ちが、経済に大きな影響を与えることもある。
●  個人投資家が株式市場に戻ってきた
  株式売買代金全体に占める個人の比率は、2008年には20〜25%であったが、2009年に入って割合が高まり、現在は30%を超えている。外国人投資家などが日本株市場から資金を引き受けたことなどで相対的に増えたことも理由のひとつだが、3月以降徐々に割合が高まっていったのは、株式相場の低迷を投資の好機ととらえて資金を投入した人もいるからだろう。
  確かに最近、周囲で株式投資を行っている人から「株でもうかった」「(下落の)損失はそろそろ取り返せた」という声がちらほら聞かれるようになった。今年3月の最安値のときと6月を比べると、日経平均株価の上昇率は30%以上。300万円が400万円まで増えるイメージだ。人の成功体験を聞くと、「では自分もそろそろ」と考えるものだ。そうやって投資を始める人の輪が広がっていくのだろう。
●  雰囲気に流されないように
  このように周りの雰囲気や波に乗って株式投資を始めるのは決して悪いことではない。新たに始めるにしろ、再開するにしろ、背中を押してくれるきっかけは必要だからだ。とはいえ、株式投資はバーチャルなゲームではなく、自分の大切なお金を使って行うもの。イメージや他人の言葉をうのみにしていては、大きな損失を被るかもしれない。
  少し前にやはり株価が大きく下がったとき、不思議な経験をした。ある仕事に没頭していて1カ月くらい日経平均株価の数字を意識しなかったことがある。新聞も一面をさっと眺めるくらいだったのだが、毎日のように「続落」「暴落」の文字が目に入った。ところが数週間後、何げなく日経平均株価の推移をチェックしたところ、驚いたことに下がっていると思っていた株価は10%ほど上昇していたのだ。株価が上がったときより下がったときの方が記事として大きく取り上げられる傾向があるが、読む側つまり私にとっても、株価が下がったという記事の方がより強く印象に残ったのだと思う。
  価格が変動する株式に投資するとき、日々の値動きや記事を細かくチェックすることはもちろん大切だが、中期あるいは長期のトレンドをつかむことも重要だ。また、値動きの要因となる業績や財務状況などの企業の変化、政治や経済の状況を理解しておくことも忘れてはいけないだろう。
(山田静江 CFP®)
2009.06.29
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