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社長さん!技能継承していますか?
〜「2009年版ものづくり白書」より〜
●   高齢化が進む製造業の就業者
  総務省の労働力調査(2008年)によると、わが国の製造業に従事する就業者数は1,144万人であり、就業者全体6,385万人の17.9%を占める。そのうち生産工程・労務作業者が766万人(構成比67.0%)となっている。
  全産業の就業者についても同様であるが、製造業においても若年者の入職者数が長期的に減少傾向で推移してきたこと等に伴い、高齢化が進展している。製造業の就業者に占める55 歳以上の者の割合は、2008年において26.1%であり、全産業平均(28.2%)を下回っているが、製造業における高齢化は全産業平均と比べて進行が速く、55歳以上の者の割合についての両者の差は、1990年の4.2 ポイントから2008 年には2.1 ポイントにまで縮小している。一方、15〜29歳の者の割合は、2008年において製造業は17.7%であり、全産業平均(18.3%)を下回っている。
●   ものづくり現場における技能継承
  ものづくり産業における技能継承は、団塊の世代が一斉に退職するとして注目された、いわゆる2007年問題の後も、多くの企業が抱えている課題である。
  正社員300名以下の中小企業について、人材育成や技能継承等の課題を調査した「中小企業の人材育成と技能継承にかかる調査」(厚生労働省委託/2009年)によると、技能継承の必要性を感じている企業は9割強(「やや必要」18.8%、「必要」74.0%)、必要性を感じていない企業は1割弱(「必要ではない」0.2%、「あまり必要ではない」7.1%)であった。
  技能継承を必要とする理由(複数回答)としては、「技能レベルが低下すると製品製造ができず、会社の存続が不可能となるから」とする企業が71.4%で最も多いが、「技能継承は人材育成の手段としても意味があるから」が56.0%、「技能継承は新たな技術を生み出すためにも必要な取り組みであるから」が55.6%と続いており、技能継承に別の意味を見出している企業も少なくない。
●   技能継承の一環として取り組んでいること
  中小企業における技能継承の取り組み (複数回答)としては、「日々の業務を通じたベテラン社員から若手への継承(計画的ではないOJT)」が約8割、「ベテラン社員の雇用延長」が7割弱であった。技能継承のための取組といっても、日々の業務を通じた取組や雇用面での対応が主だということである。
  中規模企業(200名以上)ではこれらに加え、「技能やノウハウの見える化・標準化(ビジュアル化、マニュアル化等)」や「若手人材の継続的な採用・確保」「技能やノウハウのデータベース化」「計画的なOJTによる継承」など多角的な取り組みを行っている。ただし29名以下の企業の場合、「日々の業務を通じた継承」と「ベテラン社員の雇用延長」が中心となっているため、「技能の見える化・標準化」や「計画的なOJTによる継承」などに取り組むことも重要な課題である。
  現在の厳しい雇用情勢は、中小企業にとっては、優秀な人材獲得の機会であると考えることもできる。優秀な人材の採用や定着を容易にするためには、職場、事業所内における人材育成環境や職場環境の改善を進めることも必要であろう。
出典:経済産業省「2009年版ものづくり白書」
http://www.meti.go.jp/report/data/g90519aj.html
2009.07.06
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