>  今週のトピックス >  No.1874
デフレかインフレか − 2009年上期の世界経済総括
●   二番底にはならず
  2009年の上半期が終了した。筆者は年初の「今週のトピックス1778」で、本年の世界経済を「世界同時デフレ」と指摘し、日経平均株価を7,000前後〜1万1,000円、長期金利を1〜1.5%、ドル円相場は1ドル=80〜100円とのレンジで推移すると予想した。おおむねこの範囲で推移した上期の経済情勢を総括してみよう。
  株式相場は1月から3月に向けて下落し、3月中旬から6月に向けてほぼ一本調子で回復した。日経平均の底値は3月10日の7,054円で、これはバブル後の最安値となった。筆者は3月中旬以降、世界各国の実体経済の悪化が本格化することを根拠に7,000円台を割り込む二番底シナリオを考えたが、実際には年金基金の買い支えや政府の景気対策など公的サイドの施策によって株価は持ち直した。個人投資家の買いも入り6月中旬には一時1万円台を回復している。
●   下期はボックス相場
  では、下期にこのまま株価は上昇していくだろうか。筆者は難しいと考えている。確かに7,000円割れという最悪のシナリオは考えにくくなった。3月の時点でこの水準まで行くと政府や日銀、民間銀行や年金基金が総力戦で買い支えることがわかったからだ。ただ、こうしたプレーヤーは底値で買い支えても、上値で積極的に買いを入れるわけではない。現在、株式市場で買いのメインプレーヤーになっている個人投資家も下がれば買い、上がれば売る「逆張り投資」が特徴。株価浮揚には外国人投資家の買いが必要だが、輸出依存の日本企業を素通りして、新興国や資源国の資産を買っているのが実情だ。やはり8,000円〜1万1,000円のボックス相場ではないか。
  こうした日本素通りが続けば、円高も考えにくい。昨年は「円キャリー取引」の巻き戻しが起きて、海外に投資していたマネーが日本に急激に還流したことで円高になった。円キャリーの巻き戻しは一巡し、海外からの円資産買いが低調だと考えると円相場は1ドル=90〜105円のレンジ相場ではないか。年初予想の100円から105円に切り上げたのは、日本の投資家が国内資産に見切りをつけて海外投資に走ることを考慮したためだ。
●   中長期でデフレ続く
  2009年を占う上で最も重要なポイントとなるのが日米の長期金利だ。足元の長期金利は日本が1.3%台、米国が3.5%台。両国とも債券増発による財政悪化懸念から上期には長期金利が上昇したが、今は落ち着いている。市場ではインフレによる長期金利の上昇を予想する向きもあるが、筆者は年初のトピックスで指摘した通り、中長期での世界同時デフレを予想する立場から、金利上昇には懐疑的だ。やはり日本の長期金利は1〜1.5%の予想を堅持。先進国では債券高・株安の構図が続くと考えている。
2009.07.13
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