>  今週のトピックス >  No.1877
改正労働基準法の施行による各企業への影響
●  60時間超えの残業時間の割増率は、50%へ
  平成22年4月より長時間労働を抑制し労働者の健康確保や仕事と生活の調和を図ることを目的とする改正労働基準法が施行されることは周知のとおりである。ここ最近になって通達も出始めており、各企業に与える影響や今後の対応方法などについて議論が広がりつつある。最も大きな改正点は、やはり1カ月60時間を超える時間外労働について割増率が25%から50%になることである。中小企業への適用は猶予され、施行から3年経過後にあらためて検討されることになっているが、いろいろな影響を受けることは確かであり、早めの対応が求められる。
●  いまだに収まらない未払い残業代の請求
  時間外労働の未払い問題については、名ばかり管理職騒動により、大手外食チェーンは多大な残業未払い分等を支払っているし、つい最近も全国居酒屋チェーンの店長が、未払いの残業手当など570万円を求めて提訴したばかりである。業界によっては、長時間労働をさせても残業代を支給しないことによりなんとか経営を成り立たせているところも少なくなく、一度騒ぎになると大きく飛び火する可能性もある。未払い残業代については早めに清算すべきである、といいたいところだがそう簡単にもいかない。しかしながらこのような労務リスクを抱えていては、安心して企業経営ができないし、大きな爆弾を抱えて走っているようなものなので、基本的には適切な判断をしていく必要があるだろう。
●  就業規則や諸規定の見直しだけではなく、仕事の平準化も必要
  今回の労働基準法の改正は、確かに割増率のアップが注目を浴びているが、その他の改正点も非常に重要なことは忘れてはならない。例えば労使協定を結べば年次有給休暇が時間単位で取れるようになるのは会社にとっては大きな変更であり、企業側が運用管理していくのは大変なことである。
  就業規則や諸規定の改定も運用を考えて詳細まで定めておかなければならないし、労使協定についても後からもめることのないようにきちんと代表を選考してしっかり話し合いを行い、締結すべきである。
  就業規則の改定は今回大きなポイントになるが、社内においてまずは時間外労働そのものを減らす努力をすることが必要である。実際に同じ部署の中で仕事の量に偏りがある場合も多く、そのあたりで不公平感があり、組織の活性化を阻害しているケースも少なくない。緊急時以外、時間外労働をしなくてもいいような組織づくりが理想であり、仕事の効率化のために全社あげて改善委員会を開くぐらいの気持ちがほしいところだ。そうでなければ、気が付くと各企業は残業代のアップによる人件費増に悩むことになってしまう可能性もあるので、早めにできることから対応したいところである。
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、
庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2009.07.21
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