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民主党マニフェスト、消費税は現行税率5%を維持
●  鳩山代表が「4年間は上げない」と明言
  8月30日に行われる衆院選挙の世論調査では民主党の優勢が伝えられており、政権交代が実現する可能性が高まっている。今回の衆院選に向けた民主党のマニフェスト(政権公約)は、これまでになく重みのあるところ、同党は7月27日、マニフェストを発表したが、消費税については、現行の税率5%を維持し、税収全額相当分を年金財源に充当することを明記。同日の記者会見で、鳩山由紀夫代表は「4年間は上げない」と明言した。
  マニフェストによると、消費税率の引上げについては、社会保障目的税化やその使途である基礎的社会保障制度の抜本改革を前提に、「引上げ幅や使途を明らかにして国民の審判を受け具体化する」とした。また、インボイス制度(仕入税額控除の際に税額を明示した請求書等の保存を求める制度)を早急に導入することにより、消費者の負担した消費税が適正に国庫に納税されるようにする。
  低所得者ほど負担割合が重くなる逆進性緩和対策のためには、将来的に「給付付き消費税額控除」を導入する。これは、家計調査などの客観的な統計に基づき、年間の基礎的な消費支出に係る消費税相当額を一律に税額控除し、控除しきれない部分については給付をするもの。これにより、消費税の公平性を維持し、かつ税率を低く抑えながら、最低限の生活にかかる消費税を実質的に免除できるようにすることが狙いだ。
●  給付付き税額控除制度の導入
  消費税以外では、
(1) 給付付き税額控除制度の導入
(2) 自動車関連諸税の整理、道路特定財源の一般財源化
(3) 中小企業に係る法人税の軽減税率を18%から11%に引下げ
(4) 「一人オーナー会社(特殊支配同族会社)」の役員給与に対する損金不算入措置の廃止
(5) 税制改正の議論・決定過程を透明化するため、 与党内の税制調査会は廃止し、財務相 のもとに政治家をメンバーとする新たな政府税制調査会を設置
などが盛り込まれている。
  給付付き税額控除制度の導入は、生活保護などの社会保障制度の見直しと合わせて、
(1) 基礎控除に替わり「低所得者に対する生活支援を行う給付付き税額控除」
(2) 「給付付き消費税額控除」
(3) 就労への動機付けのため、就労時間の伸びに合わせて「給付付き税額控除」の額を増額させ、就労による収入以上に実収入が大きく伸びる形で「就労を促進する給付付き税額控除」
のいずれかの目的もしくはその組合わせの形で導入することを検討する。
  ただし、不正還付・不正受給を防ぐためにも所得の正確な把握が必要であり、納税と社会保障給付に共通の番号制度の導入が前提となる。
●  政策実現のため必要な財源は2013年度までに16.8兆円
  一方、高速道路の無料化や、55万円の出産一時金の支給、子ども1人あたり年31万2千円を中学卒業まで支給する「子ども手当」、公立高校の授業料の実質無償化(私立高校生には年12〜24万円を助成)などを含め、マニフェストが掲げる政策の実現には2013年度までに16.8兆円の財源が必要となるが、これは、国の総予算207兆円の徹底的な効率化、ムダづかい、不要不急な事業の根絶や、「埋蔵金」の活用、租税特別措置の見直しなどで手当てすることも示した。
  不透明な租税特別措置をすべて見直して、効果の乏しいもの、役割を終えたものを廃止するほか、「控除」から「手当」へ変換するため、所得税の配偶者控除・扶養控除を廃止し、「子ども手当」を創設するなどで、公平で透明な税制を創ることを通して財源を賄う。
同マニフェストの全文は↓
http://www.dpj.or.jp/news/files/INDEX2009.pdf
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2009.08.03
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