>  今週のトピックス >  No.1890
日米株が年初来高値を更新したが…
●  世界的な株高傾向続く
  7月中旬以降、世界的な株高傾向が続いている。東京株式市場では7月31日に日経平均株価が年初来高値を更新。1万356円と昨年10月6日以来、約10カ月ぶりの高値水準となった。米株式市場でもダウ工業株30種平均が9,171ドルと昨年11月4日以来の高値で終えた。こうした株高傾向は8月以降も持続するであろうか。
  今回の株高のきっかけとなったのが、インテルなど米国企業の好決算だ。米国では4〜6月期の米実質国内総生産(GDP)も前期比年率1.0%減となり、1〜3月期(6.4%減)から大幅に改善。マクロデータでも景気の底入れを裏付けた。日本では7月末に主要企業による4〜6月期決算の発表がヤマ場を迎えたが、こちらも決算内容が軒並み市場の想定以上。業績の底入れを確認した株の買いが膨らみ、相場全体を押し上げている。
●  デフレスパイラル再び?
  ただし、手放しで喜べないのが雇用情勢の悪化だ。6月の完全失業率は5.4%と過去最悪の5.5%に迫っている。有効求人倍率は過去最低を更新しており、失業率もこのままいくと6%台に乗せる可能性が高い。
  雇用環境の悪化が続けば、景気回復のポイントとなる個人消費は盛り上がらない。その結果、物価下落と景気悪化が連鎖的に起こるデフレスパイラルへとつながってもおかしくない情勢だ。実際に6月の消費者物価指数(CPI)は、価格変動の大きい生鮮食品を除いた指数で前年同月比1.7%低下と2カ月連続で下落率の記録を更新した。昨年春から夏にかけガソリン価格が急騰していた反動もあるが、ガソリンなどエネルギー価格などの影響を除いたベースでも前年同月比0.7%低下と一般的な製品やサービスの価格下落による影響度も高まりつつある。
●  一段の株高には懐疑的
  こうしたデフレスパイラルへの不安は世界規模で高まっている。ユーロ圏16カ国の6月の失業率は9.4%と1999年以来10年ぶりの高水準。7月の消費者物価上昇率(速報値)は前年同月比マイナス0.6%と1999年の通貨統合以降では最大の下落幅となり、日本と同じような状況だ。
  米国では上昇基調にあった長期金利が再び3.5%を割り込み、株高下で金利が低下している。株が買われるときは通常、債券は売られて金利は上昇するが、景気回復の勢いに自信のない投資家が安全資産の債券にも資金を振り向けている様子がうかがえる。日本市場においても一段の株高には懐疑的にならざるを得ない。
  (この原稿は8月2日に書かれたものです)
2009.08.10
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