>  今週のトピックス >  No.1893
社内のコンプライアンス違反
上司や社内窓口へ「知らせる」のは2割台
●  コンプライアンス意識の高まりと実際の行動は、必ずしもリンクしない
  第一法規株式会社と株式会社スパイアは、共同で会社員を対象にした「コンプライアンスに関するアンケート調査」を行った。同調査は、コンプライアンスという言葉やその内容が周知・普及しつつあることを背景に、意識や行動といった動向を把握するために実施したものである。
  その調査結果によると、コンプライアンスを「意識している」 人が5割(44.9%)近くに及ぶのに対し、実際に職場内でコンプライアンス違反があった場合に、上司や内部通報窓口に「知らせる」のは、その半数程度の2割台(26.4%)にとどまった。
  今回の調査結果を全般的にみると、コンプライアンスに対する認識や意識の高まりが見られる一方で、それが必ずしも実際の行動に結びつくとは言えないことや、研修の受講が必ずしも十分な理解につながっているとは言い切れない状況などが浮かび上がってきており、各企業もこれらをふまえて真剣に対応する必要がありそうである。
●  コンプライアンス違反が懸念される分野のトップは「労働時間・賃金」
  コンプライアンス違反の発生が懸念される分野に関する質問に対しては、「労働時間・賃金」「人権侵害」「労働安全」が比較的多くあがっている。「起こりそう」と「どちらかといえば起こりそう」を合わせると「労働時間・賃金」分野で54.8%、「人権侵害」分野で37.4%、「労働安全」分野で36.9%となっている。厳しい社会経済情勢や雇用動向等を背景に、労働環境全般への関心・心配の高まりや、安心して働くことのできる職場づくりを求めていると捉えることができる。
  実際に、ここ最近のコンプライアンス違反で一番注目を浴びている内容と言えば、残業代未払いの問題である。大手企業、中小企業ともに最も意識しなければならない項目であるが、名ばかり管理職の問題や労働時間を正確に把握していないことなど問題は山積みである。
  まずは、基本となる法律や通達をしっかり理解したうえで、全社的に正しい運用実務を行うことが重要であり、万が一のときの企業が抱えるリスクというものをトップに自覚させることも重要である。
●  コンプライアンス研修受講経験がある人は約6割
  会社におけるコンプライアンス関連研修の受講経験の質問については、全体の6割(60.2%)が「受講したことがある」と答えているのに対し、コンプライアンスに関する会社の方針等に関する理解度としては、「十分理解している」は3割台(34.3%)にとどまっている。「どちらかというと理解している」を含めると、全体の9割(93.1%)は何らかの形で理解をしていると捉えられるが、あくまで本人の主観であり、実際にはどの程度理解できているかは指標もないのでわかりにくい。
  理想的なコンプライアンス研修を開催するうえで大事なことは3つある。まず1つ目は、受講者全員が内容と各企業の方針をよく理解できること。2つ目は、今までの意識を変えるきっかけができること。3つ目は、個別の行動に実際に反映され、結果としてあらわれることである。そのためには、受講者の意見・感想などを細かく分析したり、上司や内部通報窓口への通報を妨げている本当の理由について、徹底的に個別ヒアリングなどで掘り下げることも時には必要となる。
  コンプライアンス重視の経営を求める声が高まる中、このような調査結果は社内体制を見直すうえでも大変参考になるデータである。今こそ、大胆な社内の風土改革や企業トップのコンプライアンス宣言などで、安心して働ける環境づくりに力を入れてみるのも1つの方法ではないだろうか。
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、
庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2009.08.17
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