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国税の新規発生滞納額が3年ぶりに増加(国税庁)
●  年度末滞納残高は10年連続で減少
  今年3月末時点での法人税や消費税など、国税の新規発生滞納額が前年度に比べ1.8%増の8,988億円となり、3年ぶりに増加したことが国税庁の発表した「2008年度 租税滞納状況」でわかった。新規発生滞納額が増加したのは、不況で法人や個人の資金繰りが悪化したことが要因とみられる。しかし、滞納整理は順調に進み、年度末の滞納残高は前年度に比べ3.8%減の1兆5,538億円となり、1999年度以降10年連続で減少した。
  今年3月までの1年間(2008年度)に発生した新規発生滞納額は、3年ぶりに増加したが、2004年度に18年ぶりに1兆円を切って以来、5年連続で大台を割っている。また、同年度中に処理した整理済額は前年度に比べ0.9%増の9,601億円と新規発生額を上回ったため、滞納残高も減少した。整理済額が前年度を上回ったのは10年ぶり。この結果、滞納残高はピークの1998年度(2兆8,149億円)の約55%まで減少している。
●  消費税の滞納残高も9年連続で減少
  税目別にみると、消費税は、新規発生滞納額が前年度比3.4%増の4,118億円と2年連続で増加し、税目別では4年連続で最多となった。しかし、整理済額が4,172億円と上回ったため、滞納残高は1.2%減の4,537億円と、9年連続で減少した。法人税も、新規発生滞納額は同14.9%増の1,835億円と2年連続で増加したが、整理済額が1,893億円と上回ったため、滞納残高も2.6%減の2,190億円と減少に転じた。
  滞納残高はピーク時に比べ大幅に減少しているが、依然として高水準にあり、加えて、消費税滞納については、滞納全体に占める割合が年々高まっている。このような状況を踏まえ国税庁では、(1)消費税滞納の優先処理、(2)厳正・的確な滞納処分による大口、悪質・処理困難事案の重点的処理、(3)集中電話催告センター室を活用した少額滞納事案の効果的・効率的処理といった基本方針に基づき、滞納の整理促進に努めていくとしている。
●  滞納整理に欠かせない滞納処分免脱罪等の法的手法
  以上のように、年度末滞納残高は10年連続して減少したが、この滞納残高減少の大きな要因は、国税当局の法律を利用した積極的な滞納整理策が功を奏したことにある。
  国税庁では通常の滞納整理では処理が進展しない事案については、国が原告となり訴訟を提起する「原告訴訟」と財産の隠匿者に対する「滞納処分免脱罪」を積極的に活用して滞納整理を進めている。2008年度は186件の原告訴訟を提起し、215件が終結し、その大部分で国側が勝訴した。
  また、滞納処分免脱罪は、国税徴収法違反事件として検察庁に告発し、財産を隠すなど悪質な滞納者を最高3年の懲役、もしくは50万円以下の罰金で処罰するもの。バブル期に名を馳せた「桃源社」が同罪で告発された例があるが、あまり多くはなかった。しかし、2006年度には4件(人員8人)と大幅に増え、2007年度が3件(同10人)、2008年度は過去最高件数の5件(人員8人)が告発されている。
  例えば、2008年度では、事業を継続しているにもかかわらず解散登記を行い、さらに架空の法人に事業を譲渡したように仮装し、取引先に架空法人名義の請求書を送付して売掛金を振り込ませて財産を隠し、約5,700万円の消費税及び源泉所得税を滞納していた人材派遣業社に対して滞納処分免脱罪を適用し検察庁へ告発している。
  当局では、今後も引き続き法的措置を積極的かつ効果的に利用して、悪質・困難事案の処理促進に努めることとしている。
同租税滞納状況の詳細は↓
http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2009/sozei_taino/index.htm
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2009.08.17
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