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自治体格差が広がる、子ども・乳幼児の「医療費助成」
  2009年8月11日付日本経済新聞1面に、子どもに対する自治体(市区町村)の医療費助成の対象が広がっているという、同紙の調査結果が発表された。
  今年4月時点の調査によると、約1,800ある全国の市区町村のうち、中学生までの入院費を軽減しているのは518、中学生までの入院費に加えて通院費まで軽減しているのは350近くで、この1年で前者は約120増、後者は5割増と大幅に増えたようだ。
●  子どもの医療費助成とは
  お金の心配をしないで病院に連れていくことができるよう、子どもにかかった保険診療の医療費に関して、公的医療保険の自己負担部分の全部または一部を、自治体が支給する制度である。都道府県ごとの助成制度に加えて、市区町村独自に支給範囲や対象年齢を決めているので、住んでいる場所によって助成内容は異なっている。
  少し前までは、赤ちゃんや小学校就学前の小さな子どもを対象とした制度だったので、一般には「乳幼児医療費助成」と呼ばれているが、小学生以上を対象に含めるよう制度改正した自治体では、「子ども医療費助成」「子どもの医療費助成」などに名称変更している。
  自治体によって異なる助成制度の対象や範囲のポイントを下表にまとめてみた。例えば東京都には、中学生まで入院・通院とも対象になり、自己負担なし、所得制限なしという恵まれた自治体もある。その一方で、日本全国で見てみると、「3歳未満まで」「就学前まで」など、小学生を対象としない自治体も4割を占めるという。
  子育て支援策は拡大傾向にあるが、自治体格差はむしろ広がっているといえるかもしれない。
<各自治体の子ども(乳幼児)医療費助成制度の違い>
項目 内容
対象 ・3歳未満まで ・就学前まで ・小学校3年生まで
・小学校卒業まで ・中学校卒業まで など
支給範囲 ・入院・通院とも ・入院のみ
・入院○才、通院△才まで支給 など
一部負担 ・自己負担あり ・自己負担なし ・○才以上自己負担あり など
支給方法 ・市区町村内の医療施設で受診時に受給者証を見せれば負担なし、 または差額分のみ支払い
・自己負担した額を後から請求して払戻しを受ける など
所得制限 ・あり(児童手当の所得制限と同じ) ・なし 
●  所得制限は児童手当の基準と同じ
  子どもを持つ家庭にはありがたい制度だが、自治体によっては所得による制限があり、一般的なサラリーマン家庭でも適用されない場合がある。
<所得制限の限度額>
扶養家族の人数(人) 所得制限限度額(万円)※ 給与収入のめやす(万円)
0 532 約733
1 570 約775
2 608 約817
3 646 約860
4 684 約902
※一律控除される8万円を差引いた金額
  例えば、専業主婦の妻と2人の子どもがいる会社員の場合、扶養家族は3人となるが、この場合、給与収入が800万円であれば子どもの医療費助成の対象となるが、900万円では対象外だ。晩産の家庭では、子どもが対象年齢のうちに年収が高くなるケースが多いが、そうなるとせっかくの制度の恩恵を受けられなくなってしまう。
  ただし同じ給与収入でも、障害者控除、雑損控除、医療費控除、小規模企業共済掛金控除などがあれば、それらを差引くことで所得制限限度額内とみなされる場合もあるので、少しだけオーバーしているようなときには、念のため申請してみるといいだろう。
  なお、この制度は自分で申請手続きをしなければ利用できない点に注意したい。また原則として公的な医療保険に加入していることが条件となるので、子どもが生まれたらまずは健康保険への加入手続きをしておくことが必要だ。
参考:日本経済新聞(2009年8月11日)
(山田静江 CFP®)
2009.08.24
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