>  今週のトピックス >  No.1902
2007年度 国の債務超過額は3.8兆円増の282.9兆円
●  資産は694.9兆円、負債は977.8兆円
  財務省がこのほど発表した2007年度の国の資産と負債の状況を示した貸借対照表によると、一般会計と特別会計を合算した結果、負債が資産を上回る債務超過額は、2006年度と比べ3兆8千億円悪化の282兆9千億円となった。2007年度の資産は同9兆6千億円減少の694兆9千億円、負債は同5兆8千億円減少の977兆8千億円(うち普通国債543兆7千億円)となった結果、資産と負債の差額は3兆8千億円の悪化となった。
  2007年度の資産は、寄託による公的年金の運用額の増加(16.1兆円)や外貨証券・日本郵政などの有価証券の保有額が増加(13.5兆円)するも、財政投融資改革での財務省の政策金融機関への貸付額の27兆円減少などで差引9兆6千億円減少。一方負債は、郵便貯金による預託金が大きく減少(31.9兆円)するも、新規国債や政府短期証券の残高が計31兆8千億円に膨らみ、差引5兆8千億円の減少にとどまった。
●  財源不足額は11.9兆円
  2007年度の行政コスト(業務費用)については、2006年度に比べ3兆9千億円減少の118兆4千億円となった。年金給付費や利払費は計1兆4千億円増加したものの、国から地方への税源委譲に伴う所得譲与税譲与金の減少など地方交付税交付金等が減少(4.3兆円)するなど、差引計3兆9千億円減少した。ただし、財源は106兆5千億円であり、財源不足額は、3兆円縮小したものの、11兆9千億円にのぼった。
  なお、2007年度の財源106兆5千億円の内訳は、租税等が2006年度比1兆4千億円減少の52兆7千億円、社会保険料が同8千億円増加の37兆7千億円、その他(運用益等)が同3千億円減少の16兆1千億円だった。業務費用が財源を超過している状態(財源不足=企業会計上の当期純損失に相当)が継続している。財源不足は、将来への負担の先送りを示しており、資産・負債差額の悪化につながっている。
●  6月末の「国の借金」は過去最大の860兆円
  一方、財務省が公表した2009年6月末時点での国債や借入金などを合計した「国の借金」は860兆2,557億円となり、前回発表の今年3月末時点から13兆7,587億円増加し、過去最高を記録していた2008年3月末時点(849兆2,396億円)を上回る過去最大の額となった。地方が抱える長期債務残高は2009年度末で約197兆円程度と見込まれており、国と地方を合わせた借金は、大台の1,000兆円を突破する状況にある。
  3月末に比べ、短期的な資金繰りのために発行する政府短期証券は、景気悪化に伴う大幅な税収減に対応するため、約10.6兆円増の119兆1,062億円と増加が目立った。国債は約3.9兆円増の684.4兆円で全体の約80%を占め、うち普通国債は、経済対策の財源確保のため増発した影響で約8.5兆円増の554.4兆円と過去最高となった。ただ、財政投融資は償還が増加し、約4兆円減の127兆円、借入金は約0.9兆円減の56兆7,087億円だった。
●  国民1人あたり約674万円の借金
  この「国の借金」860兆2,557億円は、2009年度一般会計予算の歳出総額88兆5,480億円の約9.7倍、同年度税収見込み額46兆1,030億円の18.7倍である。年収500万円のサラリーマンが9,350万円の借金を抱えている勘定だ。また、わが国の今年7月1日時点での推計人口1億2,761万人(総務省統計、概算値)で割ると、国民1人あたり約674万円の借金となる。これは、赤ちゃんや子ども、ご老人など未就業者を含めての数字である。
  今回は、5月29日に成立した2009年度補正予算における経済危機対策のため追加額13兆9,256億円の財源のほとんどを公債の増発で賄っている。この結果、公債依存度は、当初予算における37.6%から43.0%へと跳ね上がり、実績ベースの過去最高値だった2003年度の42.9%を上回る公債依存度となっている。加えて、景気悪化に伴う税収減も大きく、財政再建の道はさらに遠のきつつあるようだ。
(浅野宗玄  税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2009.08.31
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