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民主党圧勝で変わる 子育て支援策
  去る8月30日に投票が行われた第45回衆院選は、予想を上回る民主党の大勝利で終わった。民主党は公示前115議席の約2.7倍にあたる308議席という圧倒的過半数を得た。一方自民党は、公示前300議席から119議席へと、半数以下に減らしてしまった。
  この結果により、民主党のマニフェストにある各種改革が実行される可能性が非常に高まった。特に注目されていた子育て支援策について確認してみよう。
●  子育て世代に手厚い各種給付金や公立高校の学費無料化
  今回の選挙の争点のひとつが「子育て支援策」。民主党は、中学卒業までの子ども全員に、1人あたり月2万6,000円(年間31万2,000円)を支給するという政策を示した。中学卒業までということは、15歳の年度末(15歳になった後の3月末)までになると思われるので、4月生まれ(1日を除く)なら最大で16年間、499万2,000円受け取れることになる。これに公立高校の学費無料化が加われば、ずっと公立コースなら大学卒業までに支払うことになる学費の相当部分をカバーすることができるだろう。なお、私立高校生に対しても相当額が支給される見込みと言われている。
  現在小学校6年生まで支給されている児童手当は毎月5,000円(3歳未満は1万円)で、しかも所得制限があるが、民主党案では支給額が大幅に増え所得制限もなくなる可能性が高いので、子育て世帯には朗報といえるだろう。給付金を当て込んだ金融商品(こども保険関連商品など)も、開発されるかもしれない。
  このほか、出産一時金の大幅引き上げ(10月から42万円を55万円にアップ)などが予定されている。
<子育て支援策の比較>
  現状 民主党案
子育て支援 小学校卒業まで、月5,000円の児童手当を支給(3歳未満は月1万円)。所得制限あり 中学校卒業まで、月2万6,000円の子ども手当を支給。所得制限なし
(所得控除)
 ※課税所得を減らす
・配偶者控除・扶養控除
 38万円(住民税は33万円)
・満16〜満23歳の扶養控除
 63万円(住民税は45万円)
配偶者控除、扶養控除は廃止
高校授業料 ・公立高校無償化
・私立高校生には給付金
出産育児一時金 38万円(10月から42万円) 55万円
●  配偶者控除、扶養控除廃止で税負担は増える
  大盤振る舞いと批判されているが、財源に充てるため、配偶者控除や扶養控除を廃止する予定。この結果、例えば専業主婦と小学生の子1人の家庭なら、配偶者控除と扶養控除で計76万円(住民税は66万円)課税所得が増えることになる。このときの増税額は、年収500万円(所得税5%、住民税10%)では10万4,000円、年収1,000万円(所得税20%、住民税10%)では21万8,000円となる計算だ。
  いずれにしても受け取れる給付金と比べればプラスになるし、年収1,000万円の家庭では従来であれば児童手当が受け取れなかったことを考えると、大きなプラスといえるだろう。
  ただし、現在の税制では、満16歳から満23歳までの扶養する子がいる場合には、所得税で63万円、住民税で45万円の扶養控除を受けることができるが、扶養控除等が廃止されると、妻が専業主婦で満16歳から満23歳の扶養する子が1人いる例で試算してみると、年収500万円で年12万8,500円、年収1,000万円で28万円の増税となる。これから給付金をもらえる家庭はいいが、そうでない家庭では増税による手取り収入の減少が家計を直撃するだろう。
  このあたりの調整がどうなるのかは、実施にあたっての課題であるが、高校生、大学生の子を抱える家庭の家計運営は本当に大変である。数年の移行期間を設けて増税が緩和されるようにするなど、納得できる解決策が示されることを期待する。
(山田静江 CFP®)
2009.09.07
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