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新入社員に見るゆとり世代の特徴
●  出世に対するイメージは、「努力・能力の証」
  産業能率大学は、6月に発表した「2009年度新入社員の会社生活調査」を年代別にクロス集計し、ゆとり世代(1987年度生まれ以降=21歳以下)と、22歳以上の層を比べてゆとり世代の特徴をまとめた。
  調査結果によると「出世」に対するイメージについては、ゆとり世代はその上の世代と比較して「努力・能力の証」という回答が顕著に高いということがわかった。増えた自由時間を遊びに使うか勉強に使うかを選択してきたゆとり世代は、出世を自分の努力の証と捉えているようだ。
  一方で「所得の向上」「社会的なステータスの向上」と回答した割合は、22歳以上の層より低くなっており、世代により感覚の差があることがはっきり読み取れる。
  これらの調査結果は、人材育成の現場に活かしながら、今後の採用活動の参考にもなるデータといえるだろう。
●  ゆとり世代、「転職は挫折」とイメージする人の割合が高い
  転職について「キャリアアップ」と「挫折」のどちらのイメージが強いかを尋ねた質問では、22歳以上ではキャリアアップが75%、挫折が25%と大きく開きがあるのに対して、ゆとり世代は「キャリアアップ」(52%)と「挫折」(48%)が拮抗している。いったん乗った進路からはずれることは、「挫折」のイメージがつきまとうのかもしれない。
  また、上司の仕事で一番大事だと思うものについて、「部下の報告を受ける」「部下に指示を出す」「部下からの相談にのる」という三択で聞いた質問では、「部下に指示を出す」という回答についてゆとり世代が41%である一方、22歳以上では30%と、11ポイントの開きがみられた。一方、「部下の報告を受ける」とする回答は、22歳以上の層の半分程度にとどまるなど、指示待ちの姿勢が強く感じられる。部下として配属されてきたゆとり世代社員には、上司から積極的に話しかけ、定期的に面談の時間をとり、いろいろな仕事上の悩みや人間関係のこと、私生活のことなどについて相談にのってあげるのがよいだろう。
●  ゆとり社員には、その特徴を理解して対応すべき
  ゆとり世代の当事者たちは、「ゆとり世代」といわれることに対して好意的に思っていない人が多いのが現状である。「ゆとり世代」という言葉でひとくくりにしてしまうのは問題があるが、今後各企業に続々と入社してくる「ゆとり教育世代」の新入社員たちの価値観や行動は、やはり特徴があるのでそれらを把握しておくことが必要である。
  ゆとり世代社員は、コミュニケーションの取り方もかなり特徴があり、メールで何事も済ませる傾向にある。実際に現場で上司が「これは、メールでなく電話するのが当然だろう」ということを指導すると、反論して自己の考え方を強く主張するゆとり世代社員もいるので、上司はその言動が理解できず苦しんでしまうことも珍しくない。
  また、ゆとり世代社員はインターネットで何でも調べるため、人に尋ねたりすることが少ないことも特徴である。さらに、年配者とのコミュニケーションの機会が少なく、また積極的に自分から違った立場の人とはコミュニケーションを取ろうとしない人が多いのも特徴である。
  ゆとり世代社員の叱り方は、かなり注意して言葉を選ぶ必要がある。上司は、ゆとり世代社員の特徴を把握した上で適切な対応を取れば、トラブルを回避できるのでそのためにも、上司が横のつながりを大事にして、社内で情報や体験談などを共有したり、勉強会などを開催することも必要だと思われる。
参考:学校法人産業能率大学「2009年度新入社員の会社生活調査」
http://www.sanno.ac.jp/research/yutori2009.html
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、
庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2009.09.14
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