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民主党の大勝、政権交代で税制も大きく変わる!?
●  消費税率は4年間は上げず、現行税率5%を維持
  8月30日に行われた衆院選挙の結果、民主党が大勝し政権交代が実現した。民主党政権となったことで財政再建や税制抜本改革の行方が気になるところだが、今回の衆院選で打ち出した民主党のマニフェスト(政権公約)によると、消費税を含む税制の抜本改革については、2009年度税制改正法附則による道筋に沿って、2011年度までに必要な法制上の措置を講じ、経済状況の好転後遅滞なく実施すると表明している。
  ただし、消費税については、現行の税率5%を維持し、税収全額相当分を年金財源に充当すると明記し、鳩山由紀夫代表も「4年間は上げない」と明言。消費税率の引上げは、社会保障目的税化やその使途である基礎的社会保障制度の抜本改革を前提に、「引上げ幅や使途を明らかにして国民の審判を受け具体化する」。財政再建については、今後10年以内に国・地方のプライマリー・バランス黒字化の確実な達成を目指す。
  税制面では、
  (1)自動車関連諸税の整理、道路特定財源の一般財源化
  (2)給付付き税額控除制度の導入
  (3)中小企業に係る法人税の軽減税率を18%から11%に引下げ
  (4)「一人オーナー会社(特殊支配同族会社)」の役員給与に対する損金不算入措置の廃止
  などを掲げている。
●  社保庁を廃止し、国税庁と統合して「歳入庁」を創設
  そのほか注目されるのは、マニフェストに、社会保険庁を廃止し国税庁と機能を統合した「歳入庁」の創設が盛り込まれていたことだ。社保庁は、すでにその解体が始まっており、昨年10月からは政府管掌健康保険業務が協会けんぽに移され、来年1月からは公的年金業務を日本年金機構が引き継ぎ、社保庁を完全廃止することが予定されている。しかし民主党は、それでは年金記録問題がうやむやになると考えている。
  社保庁の体質をそのまま受け継いだ組織では年金記録問題は解決できないことから、歳入庁を創設することにより、税と保険料を一体的に徴収し未納をなくす、国税庁の持つ所得情報やノウハウを活用して適正な徴収と記録管理を実現する、などの改革を進める方針だ。国税庁と社保庁の統合は、過去の国会でも議論されていたが、民主党政権となったことでにわかに実現性が強まっている。
●  2010年度の税制改正の審議過程は注目必至!!
  一方、各省庁の2010年度税制改正要望が出揃ったが、今年は例年に比して大きな要望項目に乏しく、全体的に小粒な感がある。それは、今後の税制改正の審議過程が不透明となったことが要因だ。これまでの自民党政権下における各省庁の税制改正要望は、概算要求とセットで掲げていたものだが、新政権の民主党は、国の総予算207兆円を全面組み替えることを表明しており、一定の見直しを迫られることは避けられない。
  民主党は、これまでの税制改正議論は与党税制調査会、政府税制調査会、経済財政諮問会議によってバラバラに行われてきて、特に、与党税制調査会は不透明な形で政策決定を行い、既得権益の温床となってきたと批判している。
  そこで新政権は、与党内の税制調査会は廃止し、財務大臣の下に政治家をメンバーとする新たな政府税制調査会を設置し、政治家が責任を持って税制改正作業および決定を行う考えだ。地方税については、地方6団体、総務大臣、新たな政府税制調査会が対等の立場で協議を行う。従来の政府税制調査会も廃止し、代わりに税制の専門家として中長期的視点から税制のあり方に関して助言を行う専門委員会を新政府税制調査会の下に置く。
  これらの意見集約の過程は公開を原則とする。また、租税特別措置について、減税措置の適用状況や政策評価等を明らかにした上で、恒久化あるいは廃止の方向性を明確にする「租税特別措置透明化法」を制定することも政権公約の一つだ。こうした民主党の政権公約に基づく新たな政府税制調査会等が、いつどのように動き出すのかが今のところ不明であるため、今後の2010年度税制改正に向けた動きが例年以上に注目される。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2009.09.14
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