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4割強の企業が経理財務はすべて会計専門家に委託
〜平成20年度 中小企業の会計に関する実態調査
●  会計専門家への年間支払報酬は100万円未満が8割弱
  4割強の中小企業が、経理財務に関する事務を税理士など会計専門家にすべて委託していることが、中小企業庁が新日本有限責任監査法人に委託して今年2〜3月に実施した「平成20年度 中小企業の会計に関する実態調査」で分かった。調査結果(有効回答数5,064社)によると、経理財務に関する事務は、「仕訳伝票を会計専門家に渡し、外注」という回答が43.0%と最多。会計専門家は「税理士」が79.2%、「公認会計士」が17.7%だった。
  次いで「総勘定元帳の作成まで社内、財務諸表の処理と税務申告は会計専門家に外注」が27.1%、「財務諸表の作成まで一貫して社内、税務申告は外注」が21.8%、「財務諸表の作成、税務申告まで一貫して社内」は3.8%だった。
  会計専門家への年間支払報酬は、「50万円以上100万円未満」が45.3%、「50万円未満」が33.1%、「100万円以上200万円未満」が16.9%などとなっており、100万円未満が全体の78.4%を占めている。
●  会計ソフトは5割近い企業が「利用せず」
  会計ソフトの利用状況については、46.2%と5割近い企業が「会計ソフトは利用していない」と回答して最多、次いで「市販ソフトを利用」が30.4%の企業、「独自の会計ソフトを利用」が5.9%だった。
  一方、決算書の作成について、財務管理上、期中の締めの頻度は、「毎月締めを行っている」が67.6%、「1年に1度締めを行っている」が12.6%となっており、「毎日締めを行っている」とする企業は5.2%に過ぎない。
  また、作成した決算書の利用方法(複数回答)は、「過去の売上と利益について比較を行い、その推移を確認」が82.3%、「貸借対照表の借入額の推移を確認」が42.7%、「売上高経常利益率や自己資本比率等の基礎的な経営指標を算出し、確認」が39.8%など。決算書の開示先(複数回答)は、「主要取引金融機関」が81.0%、「役員(代表者を除く)」が44.7%と多いが、「取引先・顧客」(14.6%)や「従業員」(9.6%)への開示は少数だった。
●  「中小企業の会計」を「知っている」企業は42%
  「中小企業の会計」とは、中小企業が計算書類の作成にあたって拠ることが望ましい会計処理や注記等を示した「中小企業の会計に関する指針」などの中小企業の会計ルールに関する事項を総称するもの。この「中小企業の会計」については、何らかのことを「知っている」と回答した企業は前年調査から1.6ポイント減の42.4%となった。
  「中小企業の会計」について知っていることは、「指針の内容について、ある程度理解している」が24.7%、「信用保証協会の保証料率の割引を知っている」が13.0%など。一方、「何も知らない」企業が56.4%を占めており、過半の企業は「中小企業の会計」を知らない。「中小企業の会計」を知ったきっかけ(複数回答)は、「税理士」が49.4%ともっとも多く、次いで「金融機関」(36.2%)、「公認会計士」(10.6%)、「新聞・雑誌」(10.2%)などの順だった。
●  「中小企業の会計に準拠して決算書類を作成」している企業は3割
  「中小企業の会計」の普及には税理士の役割が大きそうだが、税理士意識アンケート結果(有効回答数187人)では、「中小企業の会計」をクライアントに「勧めている」との回答は42.2%、「今後勧めたい」が35.8%と前向きな姿勢が多い。勧める理由(複数回答)は、「信用保証協会や金融機関の優遇商品活用に必要」(74.7%)、「金融機関からの信用力強化に有効」(73.4%)、「経営者による自社の財務状況の適切な把握に有効」(69.6%)などが挙げられた。
  なお、「中小企業の会計に準拠して計算書類の作成を行っている」と回答した企業は31.9%で、58.6%の企業が「税理士等に一任しているので分からない」としている。準拠して計算書類の作成をしたことによる効果(複数回答)は、「自社の実態が明らかになり、経営判断が行いやすくなった」が47.2%、「金融機関からの評価(信用力)が上がった」が41.7%となっており、税理士が「中小企業の会計」を勧める理由を裏付ける結果となった。
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2009.09.28
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