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税務上の貸倒れ要件は厳格
●  取引先が倒産! 税務上はどうするのか?
  取引先が突然倒産してしまったらどうすればよいだろうか? その場合、売掛金の回収はできないが、それに伴う仕入れなどの買掛金の支払いはしなくてはいけない。不況といわれ1年が経ち、売上減少による資金繰りは、特に中小企業において逼迫している。
  売掛金や貸付金が回収不能となった場合の貸倒損失は、法人税法において損金にすることができる。ただし、すぐに貸倒れを認めてしまうと、経営者の恣意性が介入する余地ができてしまうので、法人税法上は厳格に要件が定められている。
●  法人税法上の貸倒損失は3つのみ
  法人税法において、貸倒損失が損金とできる要件および金額は次の3つに限定されている。
1.法律上の貸倒れ
  (1)法律の手続きによる決定
会社更生法または民事再生法の規定による会社更生計画等の認可の決定により、売掛金などの切り捨てられる金額
  (2)関係者の協議による決定
債権者集会の協議決定、行政機関・金融機関など第3者の斡旋による協議決定などで合理的基準により、売掛金などの切り捨てられる金額
  (3)債務の免除
債務者の債務超過の状態が相当期間継続し売掛金などの弁済を受けられないことが明らかとなった場合、債務者に対して書面により債権放棄をしたときにおける、その通知した債権放棄額
2.事実上の貸倒れ
     債務者の資産状況や支払能力などからみて、売掛金などの全額が回収できないことが明らかな場合、その売掛金などの全額(一部のみの貸倒損失は認められず、担保物がある場合にはその処分後となる)
3.形式上の貸倒れ
     売掛金について次の事実がある場合、売掛金から備忘価額(1円)を控除した残額
  (1)債務者との取引停止後1年以上経過した場合(継続取引を前提とし、担保物がある場合を除く)
  (2)同一地域における売掛金の総額が取立て費用に満たない場合において、督促しても支払いがないとき
●  貸倒損失が認められない場合は、個別評価による貸倒引当金で対処
  法人税法において、貸倒損失の要件は厳しく定められている。しかし、貸倒れとはいかないまでも売掛金などの回収が相当厳しいと判断できる以下のような場合には、一般の貸倒引当金の計上とは別に個別評価による貸倒引当金の計上ができる。
1.長期棚上げ債権
  会社更生法などの規定による更生計画認可の決定などにより、支払いを猶予されたり、分割された場合
2. 取立て見込みのない債権
   債務者の債務超過が相当期間継続し事業好転の見込みがない場合などで、その対象債権につき担保権の実行などの見込みがないと認められるとき
3.更生手続き申立て など
  会社更生法などの規定による更生手続き開始の申立てなどの一定の事実が生じている場合
●  税務調査対策をする
  貸倒損失は、資金不要の永久的な節税対策でもある。そのため必ず税務調査の対象となる。事前に税理士に相談し、適用にあたってはできるだけ証拠を残し客観的に判断できるようにされたい。
(今村京子 マネーコンシェルジュ税理士法人)
2009.10.13
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