>  今週のトピックス >  No.1922
日経平均1万円割れ、二番底への懸念高まる
●  株安・債券高が現実に
  日経平均株価が10月に入って1万円の大台を割り込んだ。筆者は今週のトピックスの1906(日本経済「前門のデフレ、後門の円高」に苦戦)や1890(日米株が年初来高値を更新したが…)などで再三再四、株安・債券高の可能性を指摘してきた。筆者としてはむしろ9月いっぱいまで日経平均が1万円台を維持した方が驚きで、今後は二番底を探る展開を予想している。
  金融危機の悪影響が実体経済に波及し雇用が悪化。個人消費が低迷して物価下落(デフレ)と景気悪化の悪循環が先進国中心に世界規模で進行するというシナリオはこれまでも指摘してきた通りだ。こうしたデフレスパイラルの状況では中央銀行が景気を良くしようと金融政策を緩和し、市場に大量の資金を供給する。ところがこの資金が市場になかなか行き渡らないのが問題なのだ。
●  資金が銀行に滞留
  不景気になると一般の個人は節約したり、銀行に預金をしたりして資産防衛する。企業はモノを作っても売れないので、設備投資を抑える。銀行は個人からどんどんお金が集まってくるが、設備投資を抑えている企業はなかなかお金を借りてくれない。一方で業績の悪い企業には経営破綻する懸念があるので貸し渋る。こうして中央銀行が金融緩和で金利を引き下げても、銀行に資金が滞留してしまうわけだ。
  銀行は滞留した資金を寝かしていてもしようがないので、仕方なく少しでも金利の付く国債などの安全資産で運用する。このため債券価格はどんどん値上がりする(金利は下がる)。銀行という力強い買い手がいるので、ほかの投資家は安心して債券を買い続けることができる。一方で不景気によって業績が改善しない企業の株式には誰も見向きもしない。これがデフレスパイラル下での株安・債券高のメカニズムだ。そして今、この現象が日米欧の先進諸国で同時に起きている。
●  雇用が改善するまでは…
  では、こうした状況がいつまで続くのだろうか。注目すべき指標は失業率など雇用関連の数値だろう。仕事に就く人が減少すれば、消費が増えずに不景気が続くことは自明だ。米欧の失業率は過去最悪に近い10%に迫っているし、日本でも直近の有効求人倍率が0.42倍と過去最悪の水準だ。先進国の雇用環境が改善に向かうのは早くても年明けと言われており、それまでは株安・債券高の大きな流れは変わらないだろう。
2009.10.13
前のページにもどる
ページトップへ