>  今週のトピックス >  No.1924
配偶者控除、扶養控除の廃止と子ども手当導入の影響
●  所得控除から手当へ
  民主党は、高所得者に有利な所得控除を各種手当や給付付き税額控除などに切り替えていくことを検討している。日本の所得税は累進課税方式であり、所得が増えるほど税率も高くなる仕組みとなっている。そのため、同額の所得控除であっても、高額所得者ほど節税額が大きくなるという結果になる。また、低所得者で控除金額を所得金額から控除しきれない場合であっても、その控除不足額は切り捨てとなってしまう。
  そのため、民主党は「民主党政策集INDEX2009」の中で、配偶者控除・扶養控除の廃止と子ども手当の導入を主張しており、近々改正になることが予想される。以下、「民主党マニフェスト」「民主党政策集INDEX2009」等の公表資料からわかる範囲で、これらの内容をまとめてみたい。ただし、この内容は最終決定事項ではない。
●  配偶者控除、扶養控除の廃止は所得税のみの予定
  配偶者控除については、配偶者特別控除も含めて全面廃止の予定である。これまでは配偶者控除を適用するために、パート収入を103万円以下に調整されていた方も少なくないと思うが、この改正が実現すればこれらの調整は不要となる。ただし、年収が130万円以上になると、社会保険の被扶養者に該当しなくなるため、やはり収入には気を配っておく必要があるだろう。
  扶養控除については、現行制度では主に一般扶養控除、特定扶養控除、老人扶養控除の3つがあるが、このうち廃止対象になっているのは一般扶養控除のみである。特定扶養控除と老人扶養控除については継続される予定である。つまり影響があるのは、中学生以下の子どもを持つ世帯、ということになる。
  また、配偶者控除、扶養控除ともに現行制度では、所得税・住民税の両方から適用できる(ただし、控除金額は異なる)。今回の民主党案では、このうち所得税のみを廃止し、住民税での上記控除は残す方向で検討されている。
●  「子ども手当」と「児童手当」の違い
  上記の控除項目を廃止する代わりに、「子ども手当」の新設が検討されている。中学生以下の子どもを対象に1人当たり月額26,000円が支給される予定である(初年度は半額)。現在も、「児童手当」の名称で同様の手当が支給されているが、対象者や金額が異なる。
  「児童手当」は小学生以下の児童に対して、原則第1子・第2子は月額5,000円、第3子以降は月額10,000円が支給される。平成19年4月1日からは、3歳未満の子どもに対する児童手当は一律10,000円に改正された。また、「子ども手当」は現在のところ所得制限はされない見込みであるが、児童手当は一定の所得制限が設けられている。
●  実際の手取り額の増減は…
  結局、今回の改正が実現された場合の手取り額の増減は、上記項目を全て加味して判断しなければならない。「子ども手当」は1人当たり年312,000円が支給されるが、配偶者控除、扶養控除の廃止に伴う所得税の増加、現在支給を受けている児童手当の停止に伴う減少を総合的に考えれば、結論が出る。ちなみに、高校生の子どもを持つ世帯は「子ども手当」の対象にならない代わりに特定扶養控除が継続され、授業料の補助が検討されているため、配偶者控除の廃止と授業料補助を比較することになるだろう。
(村田 直 マネーコンシェルジュ税理士法人)
2009.10.19
前のページにもどる
ページトップへ