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2008事務年度の関税・消費税の申告漏れ等は過去最高
●  申告漏れ課税価格は約1,984億円、追徴税額は約130億円
  財務省が10月9日に発表した「関税・消費税の申告内容の輸入事後調査結果」によると、2008事務年度(2008年7月〜2009年6月)において全国の税関は6,080者の輸入者に対して事後調査を行った結果、このうち申告漏れがあった輸入者は全体の68.9%とほぼ7割にあたる4,188者となり、過去最高だった。事後調査は、輸入貨物に係る関税・消費税が適正に納税申告されていたかどうかに関する税務調査。
  また、申告漏れに係る課税価格は前年度比22.7%増の約1,984億円となり、これに対する関税・消費税の追徴税額は同15.4%増の約130億円で、ともに過去最高額だった。追徴税額の内訳は、関税が同15.6%減の約21億円、消費税が同24.2%増の約109億円。ちなみに、これまでの最高額は、申告漏れに係る課税価格および追徴税額ともに2007事務年度の各約1,617億円、約112億円だった。
●  納税額の不足が多かった品目と主な申告漏れの内容
  納税額の不足が多かった品目は、「電気機器」が約23億円、「機械類」が約13億円、「鉱石」が約9億円、「鉱物性燃料」が約9億円、「有機化学品」約7億円。これら5品目で、納付不足税額の総額の50.6%を占める。
    主な申告漏れの内容は、
 (1)インボイスに記載された決済金額以外の貨物代金の申告漏れ
 (2)海外生産のために輸入者が輸出者に無償で提供した原材料費用などの申告漏れ
 (3)輸入港までの運賃などの申告漏れ
だった。
  主な申告漏れの事例では、輸入者が支払った開発費などの申告漏れがある。輸入者Aは、イタリアの輸出者からエンジンを輸入しており、輸出者に対して開発費などを輸入貨物のインボイスに記載された決済金額とは別に支払っていた。本来、この別払いしていた開発費などは課税価格に含めるべきものだったが、Aは課税価格に含めずに申告。その結果、申告漏れ課税価格は約12億900万円、追徴税額は約6,900万円だった。
●  2008事務年度の関税ほ脱事件34件はすべて通告処分
  一方、財務省が同日発表した関税ほ脱事犯に関する犯則調査結果によると、2008事務年度(2008年7月〜2009年6月)に全国の税関は46件(前年度比2.1%減)の関税ほ脱事犯(偽りその他不正により関税を逃れる行為)に係る犯則調査に着手した。また、同事務年度に犯則調査を終了して処理(検察官への告発または税関長による通告処分)した件数は34件(前年度比24.4%減)で、すべて通告処分だった。
  処理した事件に係る関税ほ脱税額の総額は前年度に比べ99.6%減と大幅減の1,133万円、消費税も同75.9%減の756万円にとどまった。前年度は、カナダから冷凍豚肉を輸入するにあたり、実際の取引価格よりも申告価格を高価に偽って申告することによって、関税約14億3,000万円を不正に免れていた豚肉の差額関税制度を悪用した関税ほ脱事犯などがあって、関税ほ脱税額は約25億円にのぼっていた。
  関税ほ脱の件数が多かった品目は「バッグ」「財布」「衣類」「アクセサリー類」「雑貨類」など。また、主な関税ほ脱の内容は、海外旅行から帰国した旅行者がブランド品などを税関に申告しないで持ち込もうとした事犯、ブランドショップ経営者が海外旅行のついでに販売目的で購入したブランド品や、貨物船の船員が個人的なお土産として持っていた冷凍海産物を、税関に申告しないで持ち込もうとしたものだった。
  なお、通告処分は、犯則調査の結果、その情状が罰金刑に相当するときに、税関長がその罰金に相当する金額の納付を求める行政処分で、犯則者がこれに応じないときは検察官に告発することになる。2005年10月以降に輸入された申告納税方式が適用される貨物に係る関税については、通告処分の対象外とされ、重加算税が適用されることになっている。
  同輸入事後調査結果の詳細は↓
http://www.mof.go.jp/jouhou/kanzei/ka211009b2.htm
   同関税ほ脱事犯に関する犯則調査結果の詳細は↓
http://www.mof.go.jp/jouhou/kanzei/ka211009a2.htm
(浅野宗玄 税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2009.10.19
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